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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2010.02.01

軽くなった児童生徒の個人情報

児童生徒の個人情報が入ったUSBメモリを紛失したとのニュースが絶えません。学校情報セキュリティお役立ちWeb「今日もワンステップ!」によれば、昨年12月の1ヶ月だけでも8件の児童生徒の情報が漏えいしてしまいました。これらの漏えいされた情報は、本人が知らない非公開の情報ですので、他人に渡ってしまうことは重大で深刻です。

USBメモリの小型化と低価格化が急速に進み、例えば、横2センチ、縦1センチ、厚さが2ミリのUSBメモリで、実に3Gバイトも保存できます。これには、デジカメで撮影した写真が2,500枚も入れることができる容量です。しかも、10円玉と同じくらいですから、児童生徒の指導要録や問題行動などの記録を入れて持ち歩くことはごく簡単です。そこで、誰もがUSBメモリ簡単に情報を保存して持ち歩くようになって、うっかり失ってしまうケースが起きている訳です。昔では、想像もできなかったことかと思います。

昔は、これらの重要な情報は紙に書かれており、ロッカーに鍵をかけて保管していたと思います。その重さはUSBメモリと比較すれば桁違いに重かったです。しかし、今は、ほとんど重さを感じないUSBメモリに個人情報をいれて持ち歩いている訳です。「自分は絶対大丈夫だ」と思っている方がほとんどですが、重要な児童生徒の情報を持ち出すことについてはどのように考えますでしょうか。

人間の感覚はおかしなところがあります。例えば、同じ重さで大きさが異なる二つがあったとします。二つを交互に持ってみると、同じ重さにも関わらず、小さい方がずっしりと重く感じます。小さいものは軽いという先入観があるためです。

このことと同様に考えてみますと、児童生徒の個人情報の重要性は以前と変わりませんから、小さいUSBメモリの方がずっしり重く感じるのが普通です。しかし、USBメモリを持ち歩く人にとっては、USBメモリを軽く感じているのではないでしょうか。これは、保存している個人情報の重要さを非常に低く評価していることを意味しています。このことは、二つの同じ重さで大きさが違うものを持ったときの比較からわかると思います。私は、児童生徒の個人情報を重く感じる感覚を養いたいと思っています。

清水先生

東京工業大学 監事(常勤)・名誉教授、(社)日本教育工学振興会(JAPET) 理事、
日本教育工学協会(JAET) 常任理事。
教育工学の権威の一人として知られ、工学的なアプローチからの
教育工学を主とする。専門は、教育工学、電磁波工学、弾性表面波工学。

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