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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2010.08.13

教師の授業力を向上させるための校内教員研修の方法

1.はじめに

児童生徒の学習状況の改善と学力の向上は喫緊の課題となっている。それを解決するためには、
教師の授業力を向上させることが不可欠である。

そこで、筆者は、2006年度より現在まで東京都荒川区立尾久第六小学校と協働して、全教職員が全校児童一人ひとりを看取り、その結果を共有し合うとともに、その実態を踏まえて、日々の授業の目標を達成するためにより効果的で魅力的な授業を協働して創造し、授業実践と授業観察及び、ワークショップの手法を用いた協働省察によって、その授業のよさの確認と改善策の検討を行う校内授業研修会を継続してきた。

その際、授業改善のための視点としては、ID(Instructional Design)の考え方を基軸に、
ICTの活用と情報教育、図書活用と読書指導、地域人材活用と学校・家庭連携の3つの方策を取り入れた効果的で魅力的な授業づくり・授業展開・授業評価の方法を取り入れた。

協働と省察を取り入れた校内教員研修の継続による持続的な授業力・学力向上モデル(尾久六モデル)を図1に示す。

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図1「協働と省察を取り入れた校内教員研修の継続による持続的な授業力・学力向上モデル」

そこで見いだされた協働の実践知を相互に共有しあうとともに、各教員がその実践知を取り入れた授業を日々実践し、自己省察を通してよさの確認と課題の明確化を行い、そこで得られた実践知を基にして、次の回の授業の協働創造へと活かす活動を継続してきた。

換言すれば、協働と省察の積み上げによって、効果的で魅力的な授業を醸成し続けることで、
その過程を通して、児童の実態把握力、授業構成力、図書教材及びICTメディア選択開発活用力、人材活用力、授業展開力、授業観察力、授業評価・学習評価力等の授業力を向上し続けている。

その結果、児童の学力は飛躍的に向上し、現在も学力向上と授業力向上のマニフェストを掲げ、実践を継続している。

2.授業実践の方略と手順

(1)授業づくりに関する方略

(a)その授業のねらいの達成のために、より効果的な授業を創造する
(b)子どもたちにとって、「おもしろそうだなあ」、
「やりがいがありそうだなあ」、「やればできそうだなあ」、
「やってよかったなあ」という、より魅力的な授業を創造する、
の2つが授業づくりの基本的な考え方である。

(2)授業展開に関する方略

(a)知識・理解の定着と技能の習得を確実に行う「習得型」の学習
(b)身に付けた知識・理解、技能を活用するとともに、図書などの印刷情報やWebや映像等の電子情報及び、ICTなどの情報手段を活用して課題解決に取り組む「活用型」の学習
(c)知的好奇心と興味関心に支えられ、主体的・自律的・体験的・意欲的に課題追究に取り組み、学びのおもしろさを味わわせる「探究型」学習

この3つの学習を適宜相互に往還する授業実践を行う。開発した学習プロセスを図2に示す。

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図2「学習プロセス」

(3)校内教員研修の手順と授業改善モデル

(a)低・中・高の学年部会において、協働して、授業づくりをする
(b)分科会提案として代表者が授業実践を行い、全教職員で授業観察をし、
授業者の良い点と改善点、学習者の良い点と改善点の4観点で気がついたことを付箋紙に記し、その直後に開催される授業検討会で、ワークショップ形式で協働して授業評価を行い、その結果を図にして発表と意見交換を行い、協働の実践知を形成する
(c)各教員がその実践知を取り入れた授業を日々実践する
(d)日々の授業実践を、各自で振り返り、よさの確認と課題の明確化を行う
(e)そこで得られた実践知を基にして、次の回の授業の協働創造の際に反映させる

以上のa?eを繰り返し、継続して実践知を精緻化し、積み上げていく。本研究において構築した校内研修を通した授業力の向上を目指す授業改善モデルを図3に示す。

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図3「授業力向上を目指した授業改善モデル」

3.まとめ

1年間の取り組みを振り返って、教師がどのように受け止めたか、1例を示す。

・ワークショップによる協議会がこの4年間の積み上げで定着し、短時間で成果と課題をまとめられるようになった。職員間で授業について率直に意見を出しやすい雰囲気が生まれ、それが事前研などにも現れてきている。

・30年以上にわたって研究授業と協議会を経験してきたが、このような形の話し合いは初めてある。シャッターチャンスを逃さず記録できる付箋紙、討論の方向が明確なマトリックス表の描画、各自の考えを肯定的に受け止めるワークショップは革命的であった。何よりも、時間あたりの意見の量、焦点化した話し合い、発表による共通理解という点で、大変有意義な方法である。

以上のように、ワークショップ型校内研修は、全ての教師が自信を持って普段の授業実践に取り組むことを支援することができた。また、教師が自信を持って授業を行うことで、児童の学力の向上と学習状況の改善も図ることができた。

そして、尾久第六小学校では、ICTは特別なメディアではなく、児童にとっては学習課題を解決するための学習道具として、教師にとっては「効果的でわかる授業」、「魅力的でわくわくして楽しい授業」を実現するために教具として、日常的に活用している。

その結果、個々の教師はそれぞれに授業力の向上を実感し、自信を持って日々の教育実践に取り組んでいる。これまで取り組まれてきた「協働と省察による授業力向上の取り組み」を1つのモデルとして、全国の学校現場において参考にしていただき、それぞれの学校の状況に応じた取り組みが広まっていくことを願っている。

今後は、「協働と省察による校内教員研修が教師の授業力と学習者の学力向上に及ぼす影響」プロジェクトに引き継がれ、全国で実践的に研究を推進していく計画であり、現在、協力校を募集している。



南部昌敏

上越教育大学大学院学校教育研究科 教授、
日本教育工学協会(JAET) 副会長、日本教育工学会(JSET) 理事。
管理職を対象とした戦略的ICT研修、教師の授業力向上のための
校内教員研修などを手掛けている。

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