ISENのつぶやき

TOP > 学校ICT・セキュリティコラム > 未来の学校環境を検証する「フューチャースクール」と「学びのイノベーション」

研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2012.06.25

未来の学校環境を検証する「フューチャースクール」と「学びのイノベーション」

2010年度、総務省「フューチャースクール推進事業」は小学校10校でスタートしました。
1年遅れて文部科学省「学びのイノベーション推進事業」が始まり、
同じ時期に中学校8校と特別支援学校2校が参加して全体で20校になり、
両省が連携して実証研究を行っています。

筆者は、両事業の委員(構成員)として関わっているので、その成果と今後について
ご紹介します。

文部科学省は主として「ソフト・ヒューマン・教育面」を担当し、
総務省は主として「ハード・インフラ・情報通信技術面」を担当します。
実証校では、子どもたちと教員すべてに一人一台のタブレットPCが配布され、
いずれも無線LANを利用してインターネットを利用したり、
専用のクラウドサーバーに接続したりといったことができます。
また、すべての教室に電子黒板や実物投影機が常設され、教員はいつでも
どの授業でも利用できます。

これらの環境を有効に活用するために、各校には専従の支援員が常駐していて、
教員の器機操作や授業準備のサポートに加えて、授業中のアシスタントも務めています。

 

これまで2年間の成果は総務省の「教育分野におけるICT利活用推進のための
情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)」にまとめられています。

大きな成果のひとつは、子どもたちがお互いに教えあい学びあうという
「協働学習」がほとんどの教科で推進されているということです。
協働学習を指導すること(協働教育)はこの事業の中心的な目的のひとつで、
一人一台のタブレットPCで個別学習が行われ、そこから得られた考え方や知識を、
電子黒板への提示やネットワークを利用したファイル共有などを利用して、
グループ内あるいはクラス内で共有することが積極的に行われました。

当初は、一人一台、タブレットPC、電子黒板などの効果について、
懐疑的であった先生も少なくありませんでしたが、意外に学校の先生方は柔軟性が高く、
ほとんどの先生が「他校へ異動してもとの環境に戻ることはできない」と心配している
様子です。

もちろん、子どもたちは最初から新しい環境に興味津々で、操作面で戸惑う子どもは
ほとんど見られませんでした。子どもたちにとってもタブレットPCは欠かせない存在に
なりつつあり、どの授業でも「集中力が高くなった」という報告を得ています。

 

文部科学省が毎年調査している教員のICT活用指導力調査の結果も、
実証校はたった1年で大きく向上しました。

この事業ではまた、子どもたちが使うデジタル教科書についての検証も行われ
ています。こちらについてはいまだ検証中という状態ですが、一人一台PCの環境
が教科書という側面でどれだけの効果があるかについて評価することになっています。

さらに、クラウドコンピューティングの技術を利用して、子どもたちが自宅など
学校外で端末を使うことも検証される予定で、情報セキュリティなど
従来の学校環境にはなかった課題を検討するワーキンググループが
文部科学省の事業の中に設置されています。

総務省の事業は今年度で終わり、文部科学省の事業も来年度で終わります。
20校の実証結果に大きな注目が寄せられています。

【参照】

▼総務省「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関する
ガイドライン(手引書)2011」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000110108.pdf

▼総務省「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関する
ガイドライン(手引書)2012」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000153968.pdf

小泉先生

尚美学園大学芸術情報学部教授。 立教大学大学院理学研究科修了。
都立高校教諭、都総合技術教育センター専門教育主事等を経て、 2005年4月より現職。文部科学省主催による教育の情報化に 関する調査研究および各種検討会に参加し、
高等学校共通教科「情報」の学習指導要領改訂にも参画。
2008年5月より文部科学省参与。
その他、経済産業省主催「U-20(アンダー20)プログラミング・コンテスト」審査委員長なども 務める。
著書に『図解チャート よくわかる実習[情報]』 『これで完璧!圧縮・解凍』(いずれも技術評論社)など多数。

一覧へ戻る


PAGE TOP