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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2013.02.20

多様化する学校教育におけるICT活用

学校を巡る課題は、数多くある。
教員が多忙になった。小学校では職員室で自分の席を温める暇がないと
いわれるほど、子どもたちと接したり、授業を行ったりしている。
その間に、多くの事務書類が机の上に山積し、その処理だけで労力と時間を
要するので、自宅に仕事を持ち帰ることが当たり前になっている。

校務の情報化は、喫緊の課題である。
教員の多忙さは、うつ病などの精神疾患を引き起こし、
一般企業に比べるとその比率は高いと言われている。
多忙感を軽減するためには、学校と自宅を結び安心して仕事ができるように、
情報環境を整える必要がある。
教員の勤務時間の弾力化が求められると同時に、校務文書や公的文書の
標準化とデジタル化が必須となる。

また、子どもたちの多様化も、教員の多忙さに拍車をかけている。
軽度発達障害の児童生徒が平均で6%以上になり、
1クラス当たり2~3人の該当する子どもたちがいることから、教員はその対応に
追われ、他の子どもたちへの学習指導が困難になっている。

ある学校では、タブレットPCなどのICTを活用することによって、一斉授業下
における個別指導を実現し、この課題に取り組んでいる。現在の学校では、
一斉授業と個別指導や協働学習を組み合わせた授業形態が求められ、
ICTが有効な道具として期待されるであろう。

少子化が急速に進んできた。そのため、小規模学校化や学校の統廃合が進み、
かつてのような大勢の児童生徒たちの中で揉まれて、社会性を身につける機会が
少なくなってきた。

ある過疎地帯の高等学校では、少人数生徒数のために教職員の数も最小限に
抑えられ、選択科目など自由に開講できないという。
このため、この学校では大規模校とオンラインで結び、大規模校の授業を
ライブで受講できるような仕組みを検討している。

引きこもりや不登校の児童生徒数は一向に減少せず、社会問題化している。
対面でコミュニケーションすることが苦手な子どもたちにとって、
電子メールなどのICTは自分の気持ちや考えを素直に表現できる
垣根の低い道具であり、少しずつ登校できるようになったという研究や報告がある。

以上のように学校を巡るさまざまな問題に対して、ICTという道具は解決手段
として期待されており、注目してよい。

ただし、その使い方によっては、引きこもりを治癒する良薬にもなれば、
ネットいじめのような毒薬になる場合もある。
ICTという道具は、使い方の良否によって裏表のように変わる特性を持っている。
ICTの可能性を追求すると同時に、正しい使い方を子どもたちに伝えていきたい。

赤堀先生

白鴎大学教育学部 教授・学部長、教育テスト研究センター 理事、
東京工業大学 名誉教授、(財)コンピュータ教育開発センター(CEC) 理事長、
(社)日本教育工学振興会(JAPET) 理事、日本視聴覚協会 理事、
(財)パナソニック教育財団 常務理事、日本教育工学協会(JAET) 常任理事。
教育工学を中心に様々な教育実践、教育研究に取り組んでいる。

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