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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

ISEN委員長 山西先生のコラム

2015.02.13

ICTの教育利用 ~代替からイノベーションへ~

 タブレットPCの学校への普及が急速に進んでいる。比較的安価なうえに、
さまざまな授業形態に対応できる利便性があるからであろう。
全校生徒に貸与したり購入させたりする地方教育委員会も出てきた。

 個人的には、各学校で進められているコンピューター室の更新時期には、
キーボード付きのタブレットPCが望ましいと思う。
コンピューターやインターネットの基本的な使い方、パワーポイントや
エクセルの活用などの情報技術的な教育には、何と言ってもキーボードは不可欠だ。
授業によってはタブレットだけ取り外して教科で活用することもできる。

 さて、電子黒板が各教室に設置され、タブレットPCが教授学習活動の
道具として学校に普及するのは、教科の理解を促進し、
新しい資質としての情報活用の実践力を付ける意味からも望ましい。
しかし、教師が日常的に活用しているかというとまだまだである。
文部科学省による全国学力・学習状況調査を見ても、その活用実態は限りなく低い。
これらの道具は、まだまだ普通の教師にとって敷居が高い教授ツールなのである。
それではどうすれば日常的な活用が進むのであろうか。

 まずは教室の学習環境だ。どの学校にも黒板はある。ここに電子黒板を
持ち込んだ時に、どのように黒板と電子黒板で使い分けるのかが重要だ。
大きさも従来の黒板と同じくらいで、黒板に字を書くように、
普通に文字が書ければ教師の抵抗感が下がる。
まずは大きく写す、教科書や資料を提示し、拡大し、考えるポイントを示す。
自前の写真や動画を提示することも可能だ。
これらは、従来、教師がさまざまな工夫の中で行っていた教授活動である。
それが、電子黒板というツールで容易にできるようになったのである。

 教室へのテクノロジーの導入に関しては
「SAMRモデル」というフレームワークがある。

1. 代替(Substitution)
紙資料で提示していたものを電子的に提示するだけの行為。

2. 拡大(Augmentation)
従来の方法の単なる置き換えではなく、電子的機能を使って、
より高い教育効果を期待する行為だ。資料の拡大や比較、提示資料への
書き込みなどである。技術に必ずしも慣れていない教師にとって、
まずはこれらの代替と拡大がICT活用への第一歩であろう。
また、拡大縮小機能や保存機能を活用して、いつでも学習の振り返りを
可能にする行為は従来の指導法の強化にもつながる。

SAMRモデルでは、さらに、従来の教育方法を「3. 変更(Modification)」し、
「4. 再定義(Redefinition)」していく段階があるが、これはある意味では、
新たな能力開発のための教育方法開発でもある。

 ICTの機能を活かし、生徒自身が自ら調べ、グループで議論し、まとめ、
伝える活動は、まさに教育方法を変化させることだ。
その活動を通して、教科の学習のみならず、情報活用の実践力や
21世紀型スキルが求める能力開発につながる。変更や再定義は、
教師主導の伝達型教授技法から、子供たち自身による協働協調学習の推進など、
構成主義的な教授技法への転換を促す。どちらがいい悪いの問題ではない。
タブレットPCや電子黒板という新しい道具で教授学習スタイルが拡がるのである。

山西 潤一

富山大学 名誉教授。日本教育工学会(JSET)会長。日本教育工学協会(JAET)評議員会議長。教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)委員長。インターネットやコンピューターなどの情報通信技術を用いた 教育方法や学習環境の開発に関して、学校教育から生涯学習まで幅広く研究している。専門は、教育工学、情報教育。

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