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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

ISEN委員長 山西先生のコラム

2017.01.13

プログラミング教育への期待

昨年来、次期学習指導要領から開始される小学校での英語教育や
プログラミング教育、アクティブ・ラーニングの推進など、
新たな教育内容やその方法を巡る議論が盛んだ。

ここで、私が長年関わってきたプログラミング教育に関して、
学校現場では不安が多い。プログラミング教育という言葉から
多くの方はプログラミング言語を用いて、コンピューターに仕事を
させるプログラムを作ること、コーディングを学ぶことだと
考えてしまう。ICT技術の基礎を学び、ICTを活用するための
人材育成だという意見も聞いたことがある。

しかし、私はそうは思わない。30年前、情報化が進むことで、
仕組みはわからないがボタンを押せば、すべて自動でしてくれる
便利なブラックボックスが身の回りに増えることを喜んだ。
しかし、ブラックボックスで良いのか。そこに新たな問題が生じる。
発達段階に応じて、ブラックボックス化したシステムの中身を考え、
どのような仕組みで動いているのか理解することが重要だ。

望ましい情報化は、一部の専門家だけに任せるのではない。
中身がある程度理解できれば、その便利さや危うさも理解できる。
そのためには自らシステムを作ってみるのが一番だ。

子供のために開発されたコンピューター言語LOGOを用いて、
信号機やロボットを作ってみる活動を行った。
2時間程度の学習で子供たちは見事な作品を作ったものだ。
その創作活動で論理的に考える力、創造する力が育つとともに、
最も大事な、情報システムは人が考えて作り出したもの
という理解につながった。

プログラミング経験のない先生方にとっては、
「コンピューター言語を覚える。その仕組みまで。。」
という不安がある。しかし、まったく問題ない。
より分かりやすいコンピューター言語もあるし、
日本語で手順が説明できれば良いのだ。
私の経験から言えば、小学生が1時間から2時間で理解できる内容になる。

もう一つ、プログラミング教育には道具が必要だ。
安価なタブレット端末の導入が進んでいるが、
できれば情報システムをクリアなものにする
センサーやモータなどの入出力装置が欲しい。
これも安価で分かりやすいものがたくさん出てきた。
もちろんプログラミング教育推進のための教材費の確保も必要だ。

昨年、プログラミング教育に先進的に取り組んでいるエストニアの
教育事情を視察した。小学校でも情報の授業だけでなく、
1年生の算数、3年生の美術、5年生の社会などの多くの教科で、
教科の内容を理解するために子供たちはコンピューターや
ロボットを動かして課題解決に向けた作品作りを行っていた。

プログラミングを学ぶための学習ではなく、
道具としてコンピューターやロボットを活用する。
そこに論理的思考力や創造的思考が育つ姿を垣間見ることができた。
日本のプログラミング教育もそうありたいものだ。

山西先生

富山大学 名誉教授、上越教育大学監事
日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)会長
日本教育工学協会(JAET)評議員
教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)委員長
インターネットやコンピューターなどの情報通信技術を用いた
教育方法や学習環境の開発に関して、学校教育から生涯学習まで幅広く研究している。
専門は、教育工学、情報教育。

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