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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.05.10

日本の15歳のICTの使い方は内向的で情報消費的?

前回は、OECD PISA調査から「学校の教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数」と、
学習用途のICT活用頻度について日本の位置付けをご紹介しました。
今回はPISA調査の私的用途のICT活用頻度について解説します。

PISA調査は義務教育終了段階の15~16歳が対象なので、
普段からLINEやYouTube、ゲームアプリなど、スマートフォンを
使いこなす高校生を見ると、学習用途の活用頻度は世界最底辺でも、
私的用途のICT活用は世界トップクラスではないか?と期待したくなります。
実際はどうでしょうか?

私的用途の12項目に対して(毎日・ほぼ毎日・週に1~2回・月に1~2回・
ほとんどない)の5択から回答します。各国の傾向を把握するために、
(毎日・ほぼ毎日)回答が占める割合を国別にプロットしたものが図1(※)です。
他国と比較すると、日本の数値(黄線)は左右に極端に振れる傾向が強く、
他国よりも割合が高いのは「チャット」「1人用ゲーム」、
他国よりも割合が低いのは「SNS」「メール」「ネット動画視聴」「ニュース閲覧」
「参加型オンラインゲーム」「創作作品のアップロード」などでした。

例えば、「1人用ゲーム」は、調査対象47カ国/地域中、
最も利用頻度が高いのは日本、次いで、タイ、ギリシャという順になりました。
図2(※)は主要10カ国の比較ですが、日本の頻度が飛び抜けて高いのに対して、
スウェーデン、デンマーク、韓国は「ほとんどない」の割合が大きいことが特徴的です。

図1(※)の私的用途の中でやり玉に挙げられやすい「ネット動画視聴」は、
割合としては高いものの、他国よりはかなり低めです。
「創作作品のアップロード」に関していうと、調査対象47カ国/地域で
日本の数値は最低で、「ほとんどない」割合だけで約80%を占めています。

これらの項目を各国の回答傾向と比較すると、
日本の15歳の子がプライベートでICTを利用する用途は、
もっぱら仲間内のチャットか1人用ゲームで、実社会やニュースへの関心は低く、
創作作品を共有したり、SNSや参加型オンラインゲームで他人と
つながろうとしたりといった傾向も、他国より低いということが分かります。

言い換えれば、これはICTの内向的で情報消費的な使い方が強調されている一方、
社会的興味関心、向社会的活動、対外的な知的創造は抑圧されているわけで、
これは日本人がシャイだから、というより、生徒たちがICTを通じた
社会的コミュニケーションに習熟していない状況を端的に示すデータと言えます。
このような歪な利用傾向は、高度な学習用途のICT活用の
大きな障壁になることが予想されます。

※図1 https://school-security.jp/ml/227/zu1.pdf
※図2 https://school-security.jp/ml/227/zu2.pdf

豊福先生

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員・准教授。
公益財団法人 学習情報研究センター 研究員。
専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。
一貫して教育の情報化をテーマとして取り組み、
近年は、北欧諸国をモデルとした学習情報環境(1:1/BYOD)の構築に関わる。

主なプロジェクト
全日本小学校ホームページ大賞(J-KIDS大賞)企画運営(2003~2013)、
文部科学省・緊急スクールカウンセラー等派遣事業・東日本大震災被災地のための
学校広報支援(2011~)など。

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