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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.07.12

AI時代の教育を考える 第1回

初等教育現場に関わって40年余り。
私が横浜で初任者教員としてスタートした頃は、
学校には黒板とチョークしかありませんでした。

2年生を担任した時の話です。
国語に『スーホの白い馬』という教材があって、子どもたちから
スーホの悲しみがこもった馬頭琴の音色を聴いてみたいという声が上がりました。
私も、ぜひ聴かせたいとあちらこちら尋ね、やっと国語教育の先輩から
貴重なカセットテープをお借りすることができました。
そして、子どもたちと聞き耳を立てて聴き入ったことが、
ついこの間のように思い起こされます。

ところが、瞬く間に学校の学習環境は変化していきました。
コンピューター、プロジェクター、実物投影機、拡大提示装置(電子黒板)、
タブレット型端末、そしてインターネットの活用など。
今では、検索エンジンで「スーホの白い馬 馬頭琴の音色」などと打ち込むと、
演奏者の様子まで入った動画リストがたくさん出てきます。
NHK for schoolでは、「おはなしのくに」という番組で紹介されていて、
視聴したいと思った時間に自由に活用できます。
また、国語のデジタル教科書には、さまざまなデジタルコンテンツが搭載されています。
教師は、教科書とこれらのデジタル機器・教材を
どのように組み合わせて授業を構成すればよいかという、
授業デザイン力が問われる時代になってきました。

私は、6年前に小学校の現場を離れ、大学で教員養成に携わるようになりました。
その頃から、高度情報化の技術革新はさらにそのスピードを上げ、
最近ではAI の活用による社会変革が話題となってきました。
米国では、「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業が中心となり AI 開発を牽引しています。
中国では、国家主導の政策でAI 推進策がとられ、
「BAT」と呼ばれる大手 IT 企業を中心に、投資が活発に行われているそうです。
両国のAI開発における競争を生んでいるようです。
日本においては、どうなのでしょうか。
日本の経済成長率は 2030 年まで年平均 2.4%を達成、
世界の GDP は 14%までを目指しているそうです。
その到達にはAIの実用化が欠かせないということで、
多方面でさまざまな研究や実証実験が行われているようです。
となると、そのような人材の育成が、
今後、教育課題として挙がってくるのもそう遠くない未来といえましょう。

令和時代を迎える少し前、4月18日、
内閣府は総合科学技術・イノベーション会議を行い、
資料「AI戦略(人材育成関連)」をWebで公開しました。
次回は、その資料を共に読み解き、
これからのAI時代に向けた教育について考えていきたいと思います。

佐藤先生

長年、横浜市公立小学校に在籍。
ますます教師力が問われてくる時代を担う後輩を育てたいという思いから、
2013年度金沢星稜大学人間科学部教授の職に就く。2019年度退官。
現在、金沢星稜大学、フェリス女子学院大学、城西大学非常勤講師。
研究分野は、教科教育や教師教育であるが、
最近はプログラミング教育推進事業に関わる。
「平成30年度文部科学省委託小学校プログラミング教育の
円滑な実施に向けた教育委員会・学校等における取組促進事業」委員、
最近の著書として鈴木将司編(2018)『小学校算数科教育法』(建帛社)第1章等。

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