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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.10.11

「SecHack365」の若者たちに思う

「SecHack365」(セキュリティ・ハッカソン365)をご存じだろうか?
総務省所管の国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が
主催する人材育成プログラムで、25歳以下の若者に、
1年間(365日)かけて「サイバーセキュリティに関する
ソフトウェア開発や研究、実験、発表を一年間継続して
モノづくりをする機会を提供する」というものだ
https://sechack365.nict.go.jp/)。

参加者の多くは学生だが、職業エンジニアの参加も可能である。
一番の特徴は、文字通り「365日」をかけて“モノづくり”に
取り組むことだ。2か月に1回の集合合宿があり、
それ以外は24時間オンラインでサポートが続く。
チャットツールはもとより、必要に応じて
ライブのオンライン会議システムなどによる
グループディスカッションなども行う。

学生はNICTが費用を全額負担するので、選ばれれば
第一線の研究者の指導の下で1年間“モノづくり”に集中できる。
詳細は前述のWebサイトをご覧いただくとして、
本稿では第1回から実行委員長として関わってきた立場で
印象的に思ったことを紹介する
https://www.nict.go.jp/nct/nct-sechack365-committee-members.html)。

参加者は毎年40名前後が高倍率の中から選ばれるのだが、
プログラミングを使えることは必須で、コンピュータや
ネットワークの十分な知識と技能を有するという条件がある。
参加した結果を彼らに聞くと、親の紹介や学校の先生からの
アドバイスの影響など、他者の介在は皆無に近い。
彼らがSecHack365にたどり着いたのは、自らの興味関心によるものだ。

そんな彼らの中に、小学校のプログラミング教育や
中学校、高等学校でのセキュリティ・モラル教育など、
いわゆる「情報教育」に関心を寄せる者が毎年何名かいる。
もちろん、「セキュリティ・イノベータ」と呼ばれる
セキュリティ人材を育成するプログラムなので、
それなりのテーマを持つ参加者が多いのだが、
なぜか教育(特に、初等中等教育)に関わろうとする若者がいる。
その動機を聞いてみると「日本の情報教育は不十分で、
子どもたち(場合によっては、教員)に役立つものを作りたい」というものだ。
なんとも複雑な思いにさせられるが、
これもある意味で世の中の影響を受けているのだろう。
実際、一年目の“卒業生”の中には、
普通の小中高校生が楽しみながら、サイバー空間での
攻撃と防御の仕組みを理解するゲームを開発したり、
起業して小中高校生向けのプログラミング・スクールを
展開したりしている者もいる。

わが国で情報教育が始まってほぼ30年になる。
その歴史の中で、20年前に高校情報科が必修教科として導入され、
来年4月からは小学校で「プログラミング教育」が必修化される。
いま教育現場に撒いている“種”が、
やがて多くの花を咲かせて実を結ぶことを期待してやまない。

※2020年3月6日(金)
東京都の秋葉原で成果発表会が予定されている。
詳細は前述のURLに示したサイトにアナウンスされる予定なので、
関心のある方は足を運んでみられるとよい。

小泉先生

尚美学園大学芸術情報学部教授。 立教大学大学院理学研究科修了。
都立高校教諭、都総合技術教育センター専門教育主事等を経て、 2005年4月より現職。文部科学省主催による教育の情報化に 関する調査研究および各種検討会に参加し、
高等学校共通教科「情報」の学習指導要領改訂にも参画。
2008年5月より文部科学省参与。
その他、経済産業省主催「U-20(アンダー20)プログラミング・コンテスト」審査委員長なども 務める。
著書に『図解チャート よくわかる実習[情報]』 『これで完璧!圧縮・解凍』(いずれも技術評論社)など多数。

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