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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2020.12.25

一人1台の環境だからこそ

2020年・・・10年前にスタートした
総務省の「フューチャースクール推進事業」、
翌年、文部科学省も「学びのイノベーション実証研究」として
協働検証事業をスタートした。
当時、文部科学省では、ことあるごとに
「2020年に全国の小中学校で
一人1台のタブレット環境の整備」を謳っていた。
そのころ、ほとんどの人が誰も信じられないことだった。
ところが、2020年、世界中を襲った新型コロナウィルス感染症により、
前代未聞の危機が我が国の教育機関を直撃した。

3カ月に及ぶ休校期間、全国の学校は沈黙した。
その中で、一部の学校では「学び(教育)の継続」を
暗中模索しながらも提供できるようになった。
オンライン授業・オンデマンド授業と呼ばれる、
ICT機器とネットワークによる授業構築である。
10年前の文部科学省が提示していた環境であれば、
このような危機的状況でも日本の学校教育は
揺るぎないものだった・・・はずである。
休校期間中の授業実施率を見ると、
公立学校ではわずか5%未満。授業内容で見ると、
実施率の高かった私立学校ではどうだったのだろうか?
しかし、実施率の低かった公立学校では、
GIGAスクール構想で一人1台の環境が整い始めている。
オンデマンドに頼った私立学校のオンライン授業は、
ルーブリックを中心に見直しがされ始めている。
このことから、公立私立を問わず、
日本中の児童・生徒が学習用具としてタブレットPCを使う時代となった。

文部科学省「学びのイノベーション実証研究」では、
タブレットPCを使った10の授業事例が報告としてあげられた。

※参考「学びのイノベーション事業」実践研究報告書(平成26年)より
https://school-security.jp/ml/257/257.png

これらは、これから各学校の指針となるはずである。

いま懸念されるのは、タブレットが導入されて
どういう使われ方がされるのかである。
学習者主体の自立した学習が
新しい学習指導要領で盛り込まれている。
そうした時に、タブレットを使った学習(授業)は
どうあるべきであるか?

教育界でよく言われる「教科書(を)教える」のか
「教科書(で)教える」のか議論をタブレットPCに当てはめると、
「タブレットPC(アプリケーション)で教える」のか
「タブレットPC(情報端末)を教える」のかという
視点に立つことができる。
さて読者の皆さまはどちらでしょうか?

今回のGIGAスクール構想のねらいは、
「Society5.0の世界に生きる力」の育成である。
一部の学校では、アプリケーションを
積極的に活用した授業をされている。
タブレットになれていない段階の学校では問題ではないが、
今後、慣れてきたら特定のアプリケーションがなくても、
どの端末やOSであってもタブレットを使って
思考・創造・表現ができる子に育てなければならない。
「今、このアプリケーションが社会で一般的に使われているから
生徒も使えるようにしなければならない」というのは
大人のご都合主義と偏見であることを認識されたい。
現在はそうかも知れないが、
子どもたちが社会に出るころ(未来)に
そのアプリケーションは同じような使われ方が
されているのかだろうか。
教師は、タブレットPC導入(GIGAスクール構想)の
本来の目的をもう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか?

加藤悦雄先生

大妻中学高等学校
Chief Information Officer兼情報科教諭

3年前まで38年間、小学校教員として埼玉県、京都市、北海道で勤務。
文部科学省や総務省のICT実証検証等の研究員として実践事例研究を行い、
その内容を全国の学校や教委員会、研究会で講演や発表を行っている。
Apple Distinguished Educator、Intel21C senior muster Teacher 、
Google innovatorやD-project研究会、日本デジタル教科書学会理事に兼任。

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