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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2021.03.26

年度末、年度始めは要注意。セキュリティ事故多発期間。~「学校・教育機関における個人情報漏えい事故の発生状況」調査報告書より~

ISENでは毎年度「学校・教育機関における
個人情報の漏えい事故の発生状況調査」を
実施しております。
令和元年度の調査報告書は
ISENのWebページに掲載しております。

https://school-security.jp/leak_all/

この調査は、学校、公的教育機関で発生した
児童・生徒・保護者などの個人情報を含む
情報の紛失・漏えい事故についての公開情報を
調査し集計したものです。
したがって、発生したすべての個人情報漏えい事故を
網羅したものではありませんのでご承知おきください。

(1)減らない個人情報漏えい事故

令和元年度の事故発生件数は226件、
個人情報漏えい人数は232,875人となっています。
過去15年の推移を見ても発生件数が減る傾向はありません。
最近でもLINEの個人情報が
中国で閲覧可能となっていたことが
大きな話題となりました。
テレビラジオ、新聞雑誌、Web、SNSなどで
個人情報漏えい事故のニュースが毎日のように流れており、
個人情報保護に関する意識は高まっていると思われるのですが、
残念ながら学校現場での漏えい事故はなくなってはいません。

事故の発生場所を見ると、学校内が59.3%、
学校外が25.7%となっています。
事故の種類では、紛失・置き忘れが6割弱、
誤配布が2割弱となっています。
紛失・置き忘れを考えると、学校内だけではなく、
学校外でも十分注意が必要ですね。
漏えい経路・媒体を見ると、多い順に書類が62.4%、
USBメモリが12.4%、電子メール7.1%、
SDカード4.1%、パソコン4.1%となっており、
書類とUSBメモリで全体のほぼ4分の3を占めています。
書類が6割を超えていることは、学校現場では
紙文化が主流だということがわかります。
媒体として書類・USBが多いことを考えると、
事故の種類で紛失・置き忘れが最も多いこととつながりますね。

報告書の参考資料
個人情報の不適切な取扱いに係る処分について(3)には、
文部科学省「平成30年度公立学校教員の
人事行政調査について」をもとに
処分理由の人数分布が提示されています。
個人情報が記録された書類の紛失による処分が158人と、
個人情報が記録された電子データの紛失による処分69人の
倍以上となっています。
個人情報の不適切な取扱いに係る処分について(1)には、
監督責任による懲戒処分の人数が出ています。
管理職の方は、事故が発生すると
監督責任が問われることを十分意識しておいてください。

(2)年度末、年度始めは事故多発期間

月別の事故発生件数を見ると、
4月、3月、5月の順で多く発生しています。
過去10年の平均をみると、
4月、7月、3月の順となっています。
年度始め、1学期末の成績処理の時期、
年度末で学校が多忙な時期と重なります。
多忙な時期こそ、一度立ち止まって状況を確認しましょう。

教育委員会はタイミングを見て
通知を出すなどして注意喚起し、
学校管理職が見回りをして声掛けをするなどして
行動を起こせば、少しでも個人情報の紛失や
漏えいの事故は防げるものと思われます。
多忙な時ほど個人情報の取り扱いには気を付けましょう。

現時点では、教職員の皆さんの意識を
高めるのが最善の策と考えます。
皆さん、この時期、今一度
個人情報の取り扱いについて考えてみましょう。

ISEN副委員長 井上

株式会社JMC
APPLIC(一般財団法人全国地域情報化推進協会) テクニカルアドバイザー。
校務情報化や情報モラルに精通し、文部科学省や総務省の委員会や委託事業にも参画している。

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