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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2021.09.10

学校現場から見る「GIGAスクール」の今

学校教育においてICT環境の充実を望む多くの声が
登場してから久しい。戦前の学校は「むら」の文化の
発信拠点として、最新の教育条件が整えられていた。
例えば、ピアノであり、図書室、放送室などである。
一般家庭への普及に先だって、「子どもたちのために」という
視点から、教材・教具・環境は充実されていた。
しかし、いつからか、学校は取り残されてしまった。
そして、「黒船」のようにGIGAの波が学校に押し寄せてきた。
GIGAスクールの計画が加速した背景には、
新型コロナウイルス感染症拡大による臨時休業でオンライン授業の
ニーズがあった。
そして今もそのニーズは継続している。
しかし、実際に導入された学校現場からは、様々な課題が
生じているという声が届いている。

〈PC持ち帰りと自治体のセキュリティポリシー〉
学校の備品として導入されたPCの利用については、
設置者(各自治体)が定めた「情報セキュリティポリシー」の
対象となる。自治体ごとに内容が異なること、学校での活用を
前提としたものではないことから、家庭に持ち帰り、
オンライン上での多様な教育活用については、
検討と判断が求められる。そのため、実際の活用には想定以上に
時間を要する結果となった。

〈オンライン環境の脆弱さ〉
ハードウェア環境は整えられても、インフラ整備は一朝一夕には
整えられない。笑い話のようだが、デジタル教科書を
活用しようとしたら、ページをめくるのに10秒要した。
モバイルルーターを貸し出したが、ルーターが足りない。
データ使用量の上限設定が低く、音声のみでしか利用できないなど、
課題も山積している。

〈オンライン授業のノウハウ蓄積〉
技術的な対応がなされたのち、対面での授業をオンラインに変える
という発想で、オンライン授業が行われた。
当初は教員にオンライン授業をするノウハウがないまま、
技術的には対応できた後、45分や50分の授業を試みた実践があった。
異なる学習環境での授業に子どもたちは戸惑い、一方的な教員の授業が
流れる画面相手では集中力も持続しない。
最近ではノウハウが蓄積され、活動や協働的な学びの場面も登場してきている。

〈オンラインだからできる!新たな実践の胎動〉
最近では対面授業の代替という側面から、オンラインだから
可能となった新たな実践が報告されるようになった。
先日、中学生が小学校に出向き、読み聞かせをオンラインで
実施したと聞いた。少人数での対応や読み聞かせの回数も
増加できるだろう。感染症対策としてのオンライン授業から、
真にオンラインで広がる教育実践へとつなげていかなければ、
豊かな学びとはならない。そのための継続した支援と研究が必要である。

島﨑書記長

1990年二宮町立小学校教諭として勤務後、平塚市立小学校に勤務。
退職後、2018年4月より神奈川県教職員組合に書記長として勤務。
社会的対話を通して、学校における教育条件の充実・整備に向け取り組む。

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