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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2022.05.13

GIGAスクール構想に対する校長として

本校では、令和2年3月に児童一人1台の情報端末の配備が完了した。
「働き方改革」「ICTの推進」「新型コロナウイルス」は、
クロフネ来航からの開国、明治維新のようだと感じている。
PISA調査で日本の学校教育の良さと同時に、
国際社会と比較した課題が明らかになった。
知識偏重の学力観から思考力・判断力・表現力・学びに向かう力等への
バランスのよい学力観へのシフト、GDPに占める教育予算の低さ、
情報教育の遅れなどは閉鎖的な日本の学校教育にとって、
世界に門戸を開き世界と競合できる人材の育成という新しい視点をもたらした。
「働き方改革」「ICTの推進」「新型コロナウイルス」という3つの大きな波は、
相互に影響しながら学校の意識改革を迫った。
元々変革を求めない体質の学校である。
従前はどうだったのかを大切にして安定していた組織である。
このような大きな変革への対応は歓迎されない。
しかし、世界の状況や国内の状況を理解するにつれ、
変革の必要性は教員にも浸透してくる。
そうすると、やるべきだと考える先生が出てきて
様々な実践が紹介されて大きな流れになってくる。
GIGAスクール構想による一人1台の情報端末の配備は国際的にみても、
このように短期間で一斉に全ての児童・生徒に端末を配備した国は無いと聞いている。
日本だからこそできたことなのかもしれない。
導入当初はどうしたらいいのか不安でしかなかった。
しかし、やらなければならないと決めたあとは、
何とかしてしまうのもまた日本の教員の素晴らしさなのだと思う。
本校では仰々しく教育委員を招いて情報端末の「貸与式」を行った。
そこで、私は次のような話を全校児童にした。
「日本は天然資源が乏しい国である。
大きな戦争で敗戦した日本は二度と立ち上がれないほどに壊滅的な損害を受けた。
世界中がこの国の未来を哀れんだ。
しかし、予想に反して日本は急速に経済成長を遂げることができた。
資源もない国がなぜか。
それは日本では人こそが優れた資源だからだと思う。
日本がこれからも豊かな社会を維持していくためには、
人という資源を大切にしていかなければならない。
そのため、他国と比べて日本が遅れている情報教育を充実させることで、
将来にわたって国際社会で活躍できる人になって欲しいと願って
一人1台ずつ貸与することになった。
また、今回は先生も一緒に端末を手にしたので、
先生がよく知っている訳ではない。
いつものようにわからないことがあっても先生に聞くのではなく、
先生に教えてあげようというくらいの気概で
みんなと先生が一緒に利用できるようになって欲しい。」
今までの学校教育では、先生がわからない状況で
児童に授業を行うことはほとんどなかったと思う。
しかし、今回は「先生がわかってから」を待ってくれない状況での導入であった。
「先生がわからなくても授業をすすめていくことが大切ということもある。」
GIGAスクール構想が学校にもたらしたのは
このような授業観の変容が大きいのではないかと感じている。

大谷先生

大学卒業後デパートに就職し、
11年勤務した後、中学の数学教師に転職する。
公立中学で7年、大学附属中学で4年勤務し、
その後教育委員会を7年勤め、中学教頭を3年勤め、
現在小学校長4年目である。
趣味は沖縄ひとり旅行。

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