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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2023.03.10

AI時代、大切にすべきことは?

「急激な進化を遂げるAIと共存する時代の子どもたちのために今、何をすべきか?」
この問いについて、ひとまずの考えを小学校4年生向けの学級通信に書いてみました。
これが正しいかどうかはわかりませんが、考え続けるきっかけになればな、
と思っています。

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これから成長するにしたがって「選ぶ」ことがたくさん出てきます。
「クラブ、どこに入ろうかな?」「クラス替えの後、だれに最初に声をかけようかな?」
「中学校、どこに進学しようかな?」「どんな仕事をしようかな?」
「選挙でだれに投票しよう?」等々。
おそらく君たちにとって「選ぶ」ということはますます大事になっていくと思う。
なぜか。AIが急激な進歩を見せているからです。

ChatGPTというAIがあります。これは、普通の文章で質問すると、
まるで人間が答えているかのように回答を返してくれるものです。
試してみたら、こんな会話ができました。
鈴木: 冷蔵庫に卵と鶏もも肉とたまねぎがあります。
夕飯のおかずは何を作ればいいでしょう?
ChatGPT: 冷蔵庫にある材料から、鶏肉と卵のオムライス、
または鶏肉とたまねぎの炒め物などが作れます。
また、ステーキや焼き鳥、ポテトと一緒に作る鶏肉と卵のスキレットなども
アイデアとしてはいいかもしれません。
自分の好みやレシピに合った料理を選んでみてください。

これはおっかない時代が来たな、と思うのだよ。
冷蔵庫に卵と鶏もも肉とたまねぎがあったら、
僕なら「親子丼にしようかなぁ」と考える。
でも、AIは「親子丼」という選択肢を出さなかったよね。
それを見て今の僕は「AI、わかってないなぁ。この材料なら親子丼だよ、親子丼!」
と思うけれど、AIに質問すること、AIのアドバイスにしたがうことに慣れてしまったら
「じゃあオムライスにしようかな」と思ってしまうかもしれないよね。
「親子丼」のことなんてまったく考えずに。

そう、AIがこのまま進歩していけば、人は「選ぶ」ということを
サボるようになっていくのではないかと思う
本当は色々な可能性があるのに「AIが出してきたこの中から選べばいいか」というように。
それは、とても効率がよくて楽なのかもしれないけれど、つまらないなぁと思う。

だって、今、君たちは僕に「これをしなさい」と決められて勉強するより
「自分でどうやって勉強するか決めて」と言われる方がやる気になるでしょう?
それなのにAIがなんだかもっともらしく
「これかこれかこれで勉強するのがいいですよ」と言ってきて、
それにしたがっていればいいや、と思うのってなんだか嫌じゃない?

多分、これからの社会、AIを上手に使っていくことはすごく大切で必要なことなの。
それは間違いない。でも、その一方で「自分は何をしたいのか」という想いを
強く持っておくことがもっと大切になっていくのではないかな、と思う。
だから、自分で「選ぶ」ことができる機会があったら、
真剣に悩んで考えて「選ぶ」ようにしておいた方がいいのではないかな。

鈴木秀樹先生

東京学芸大学附属小金井小学校教諭。慶應義塾大学非常勤講師。東京学芸大学ICTセンター所員。教育学修士。
私立小学校勤務等を経て2016年より現職。
著書『ICT×インクルーシブ教育 誰一人取り残さない学びへの挑戦』(明治図書)等。

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