2011.06.13
校務情報化、教育クラウドと学校情報セキュリティ
■ 学校教育の情報化に関する懇談会教員支援WGが
示した方向性
文部科学省が「学校教育の情報化に関する懇談会」の討議を踏まえて示した
「教育の情報化ビジョン」を具体化するために設置した3つのワーキング
グループのうち、校務情報化・学校情報セキュリティに関する検討を行った
「教員支援ワーキンググループ」の「検討のまとめ」が公開されました。
今回は、私も委員として参画した同WGの「校務情報化」や「教育クラウド」、
「学校情報セキュリティ」などについて触れた検討のまとめの概要を紹介します。
出典:「教員支援ワーキンググループ 検討のまとめ(概要)」文部科学省、2011
http://jukugi.mext.go.jp/archive/469.pdf
「校務の情報化の推進方策について」
-----------------【校務支援システムの重要性とその充実のための取組み】------------------
○校務の情報化は、きめ細かな指導を可能とするとともに、校務の負担軽減を図り、
教育の質の向上と学校経営の改善に資する
(教員が子どもたちと向き合う時間の増加、子どもたちのよいところを
全教職員で共有、地域と学校の連携強化 等)
○10年後に、「教育の情報化に関する手引」第6章に示す校務の情報化の例に加え、
以下のような姿を目指す
・教職員や子どもたち一人一人がスマートフォンなどの
携帯情報端末を持つことによる、情報の随時入出力や高付加価値化
・各家庭の情報端末との連携による子どもたちの状況に関する
リアルタイムの意識共有
○校務の情報化の意義の共有が重要(今後10年間の取組)
(1)2020年度に、10年後の校務の姿を実現させる校務支援システム
及び校務用ネットワークが全国すべての学校に普及している状況を目指す
(2)2015年までに、
・クラウド・コンピューティングの活用を含めた
校務用ネットワークの在り方について、試行的な取組などを踏まえ、
一定の結論を得てその整備の方向性を示す
・ICTの時代にふわさしい校務の在り方をあらためて精査し、合理化
(3)直ちに、
・校務関係文書の標準化など、国として示すべき基本的な考え方を
明らかにすることにより、事業者等の校務支援システムの開発を促す
・校務の情報化の意義を広めるための取組を促進(好事例を広く共有)
--------------------------------------【校務関係文書のICT化】------------------------------------------
○ICTの活用による新たなスタンダードとなる校務処理の在り方を示す
○「指導要録」※をまず例に採り上げ、その作成・送付・保存の
ICT化の際の諸課題を検討することにより、今後一層の校務の情報化を
推進する上で必要な全国的な指針となる考え方を示す
※子どもたちの学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録し、
その後の指導及び外部に対する証明等に役立たせるための原簿
・指導要録の様式について、国の「参考様式」を基本とする
・押印に相当する機能を担保した上で、電子的に作成・送付・保存する際の
押印を省略し、その際の取扱いと併せて周知
・セキュリティの取扱いにつき、一般行政事務の例にならうことや、
学校情報セキュリティポリシーの策定と共有が重要
・ICTの活用による20年を越える保存については、
事業者等の技術的助言を踏まえた対応が必要
○転学等の際に必要な指導要録等以外の各種の校務関係文書についても、
基本的に指導要録等の取扱いにならい、ICT化の際の取扱いを明確化
○「通知表」については、各学校独自の書類であり、国として
標準的な項目等は示さないが、子どもたちの情報をデータベース化
することにより、作成に関わる時間の大幅削減が可能
--------------------------【校務の情報化のためのネットワークの在り方】-------------------------
○「総合行政ネットワーク(LGWAN)」及び
「地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)」の活用など、
既存の地方公共団体の資産や体制の活用を検討するなどにより、
効率的で早急な整備を図る
○クラウド・コンピューティング技術の活用のメリット・課題等について、
今後試行的な取組みを重ね、その活用方策の在り方を検討
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このように、
・指導要録等の「転学等の際に必要な校務関係文書」の原本完全電子化と
電子情報のままネットワークを介して転学処理・進級処理等を行えるよう
標準化を行うこと。
・単に現在ある帳票を電子化するのではなく、
「統合型学習者情報データベース」を構築し、それらの情報を活用して
教職員の負担を軽減すると共に、教育の質的改善を行うこと。
・校務情報化の推進に当たっては、学校情報セキュリティポリシーの策定と
共有が重要であること。
・セキュアなネットワークや認証基盤が必要ことや、
教育クラウドの導入を検討することが示されました。
■ 校務情報化、教育クラウドの導入等に伴う、
学校情報セキュリティの再考を
以上紹介したように、各教育委員会では早期に教育クラウドなどの
最新技術も活用しながら校務情報化を推進していくことが求められています。
しかし、このような校務情報化を行う際には、各種個人情報など、
どのセンシティブデータを教職員が日常的に扱うことになり、
現状のままではそれらセンシティブデータの流出が大いに懸念されます。
そこで、新たな状況を踏まえた情報セキュリティ対策
(学校情報セキュリティポリーシーの策定(特に具体手対応を定めた
「実施手順」の策定)や見直し、物理的なセキュリティ対策などについて
検討していくことが必要となります。
これを機会に、各教育委員会、学校で、校務情報化推進計画や
学校情報セキュリティポリシーの策定見直しをしてみませんか?
藤村先生
鳴門教育大学大学院 准教授。民間企業と共同開発した教育用ソフトウェア、
情報教育・社会教育・総合学習に関する著書が多数あり。
NHK、文部科学省、総務省、経済産業省関連の各種委員会の委員長、
委員も勤めている。