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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2011.10.14

パーソナルユーザーの域を抜け出せない教職員の意識改革

各学校で校務処理に利用しているパソコンのパスワード付スクリーンセーバーの
起動の待ち時間や、
コンピュータをロックする待ち時間の設定はどのようになっているだろうか。

一般的な企業や職場であればおおむね数分というところであろう。
これは、情報漏えい事故防止の対策として基本中の基本である。
席を立つ時にはカード等のユーザー認証用アイテムを持ち歩く規則により、
瞬時にパソコンをロックさせるようにしている部署すらある。

本市も平成21年度文部科学省による学校ICT環境整備事業において、
教職員の校務用コンピュータの整備が図られ、全市の校務用ネットワークの構築を
終えたのを機に、平成22年4月より本格運用を開始した。

しかし、数か月もしないうちに教職員から使い勝手の悪さを指摘する声があがり、
スクリーンセーバーの動作を回避させるためのウラ技が広まり始めた。

貸与されたパソコンはセキュリティを向上させるため、画面のプロパティの使用
制限により、
ユーザーによるスクリーンセーバーや電源管理等の設定変更を無効としている。

そこで、「バックグランドでCPU負荷の少ないソフトウェアを動かし続けることにより、
待ち時間をカウントさせない」方法をとったのである。
最も多かったのは「音楽CDを再生し続け、音量はミュートにしておく」というもの
であった。

教職員が執務する職員室には、生徒・保護者・地域関係者、業者はじめ外部からの
来校者が多数出入りする。

一方、教職員が扱う教育業務にかかわる情報のうち、個人情報に関するものは
極めて多く、機密性や完全性が求められる。

そして、教職員は職員室で常時執務しているのではなく、授業や課外活動・相談や
電話等で席を離れることが多いのも特徴である。パソコンのスクリーンセーバーを
短時間で起動させなければならない理由はここにある。

一般企業や官公庁のOA化は、合理化・経費削減のもと進行した。
汎用機とワークステーションによるシステムがパソコンによるネットワークへと進化し、セキュリティの維持を図ってきたのに対し、学校のPC整備は教育利用に始まり、
そのネットワークも教育用であることからセキュリティ対策は脆弱であった。

そして10数年が経過し、その間、私的所有のパソコンを公的教育業務に使用する
という、独特の職場環境が形成されてきたのである。私的所有であるから当然
使用者の使い勝手が反映され、それが習慣化することにより、教育業務の遂行には
自分のパソコンが一番使いやすいというユーザーがたくさん登場した。

その職場に校務用パソコン・ネットワークが整備され、そのシステムを利用して、
今まで同様の業務成果が求められたことから、使い勝手を優先させるあまり制約・
制限事項(セキュリティ対策)を無視するという、パーソナルユーザーの域を
抜け出せない教職員の誕生を見ることになったのである。

以上の学校の特殊性にかんがみ、情報セキュリティ実施手順を策定・運用している
自治体においては、ユーザーたる教職員に対して、何故・どうしてそのような運用・
手順になっているか説明責任を果たし、ユーザーとしての意識改革・向上を目指す
必要があろう。主管部局による悉皆研修の必要性を強く感じるこの頃である。
校務において、機密性・完全性・可用性をいかにして維持・担保するか。

そして、教職員に個人情報を扱う者としての自覚と資質をどのようにして備えさせるか。

管理職には、戦略的構想に基づく、強烈なリーダーシップやカリスマ的指導が
求められ、悪戦苦闘の日々が続いている。

高田先生

平成8年4月-平成12年3月 札幌市教育研究所 指導主事
平成12年4月-平成14年3月 札幌市教育委員会総務部管理課 情報担当係長
平成16年4月-平成21年3月 札幌市立学校教頭
平成21年4月- 札幌市立平岡中学校 校長(現職)

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