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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2012.02.03

授業に紙とICT教材を使う

私が白鴎大学教育学部で教鞭をとるようになったのは2009年4月からなので、
まだ3年になっていない。この間、私が悩んだのは授業であった。私の専門は、
教育工学である。アメリカの大学の科目では、Instructional Technologyと
記載されている場合もあるように、狭い範囲では授業改善を目指し、
広くは教育システム全体の改善を目指す。

自分の専門が授業改善なのに、その本人の授業が学生からそっぽをむかれたら、
みじめな光景になることは、誰も納得するであろう。

そのみじめさを、少なくとも2年間体験した。今だから言えるが、
それは貴重な体験であった。というより、今でも時々感じることもあるので、
「である」という現在形のほうが、正しいかもしれない。

正直に言えば、これまで100名以上の学生を相手にした大教室で、
まるで独演会のような講義をした経験はなかった。少しは経験をしていたが、
自分の本職とは思っていなかったので、正直なところ、大教室の講義は
素人と言ってもよい。しかし、素人と言ってはいけない。
これが自分の本職であると悟った時、苦しみと多くの試行錯誤を繰り返した。

 

1年目は、怖くて学生の顔を正面から見られなかった。教材研究が自分の研究だと
思って、時間を惜しんで取り組んだ。しかし、それだけでは、学生を引き付ける
ことはできない。それは、木でいえば幹でしか過ぎない。枝葉をつけなければ、
人は木と認めてくれない。さらに、きれいな花が咲けば、人は振り向いてくれ、
鑑賞もしてくれるだろう。

そのためには、教材研究の他に、学生の反応から、教材の内容やレベル、話し方
や課題の出し方など、評価を行い、授業を学生に合った内容と方法に精錬させる
必要があった。つまり、実践である。日常の実践を通して、自分を鍛えるしかない。
その意味で学生は偉大な教師である。

2年間を過ぎると、半期の科目であれば4回の経験を積むことができる。そこに
生き残った内容や方法は、商品でいえば、売れ残りではなく買ってくれる価値ある
商品である。その商品には、例えば、シミュレーション教材、インターネットから
入手できる優れた教材、市販の映像教材などがあった。これらは、定番教材とも
言えるもので、ほとんど失敗することはなかった。どの授業でも使える定番の教材は、
ワークシートであった。結論的には、紙教材にICT教材を組み合わせることが、
最も学習効果は高かった。

振り返ってみると、チョークと黒板はほとんど使わなかったが、紙とICTにお世話に
なった。ICTの活用には、個人に応じて、様々なスタイルがあってよいと思っている。

赤堀先生

白鴎大学教育学部 教授・学部長、教育テスト研究センター 理事、
東京工業大学 名誉教授、(財)コンピュータ教育開発センター(CEC) 理事長、
(社)日本教育工学振興会(JAPET) 理事、日本視聴覚協会 理事、
(財)パナソニック教育財団 常務理事、日本教育工学協会(JAET) 常任理事。
教育工学を中心に様々な教育実践、教育研究に取り組んでいる。

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