ISENのつぶやき

TOP > 学校ICT・セキュリティコラム > バランスのとれた教育の情報化への取り組み

研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2012.10.16

バランスのとれた教育の情報化への取り組み

学校における教育の情報化は、平成10年に発足したバーチャルエージェンシーの
中に取り上げられたところから、「子ども達が変わる」(情報活用能力の育成)
「授業が変わる」(指導法の改善)「学校が変わる」(学校運営の改善)の
3つの柱が立てられている。
(参考: http://www.kantei.go.jp/jp/it/vragency/pdfs/agency4.pdf

この考え方は10年以上変わらない。

しかし、その重点は時とともに変わってきた。

学力低下の問題が取り上げられた時には、ICTを活用して指導法を工夫・改善
することで、学力の向上を図ろうとする取り組みが多く見られた。

子どもたちが携帯電話を持つようになり、さまざまなトラブルに巻き込まれる
事件が多発すると、情報モラル指導の取り組みが情報安全の面から多く
見られた。

そして、校務での個人情報漏えいなどの事故があった時には、校務の情報化を
進めセキュリティを高める取り組みが多く見られた。

こうして、3つの柱をぐるぐると回りながら、学校における教育の情報化への
取り組みが進められてきている。

今、自分の学校や地域を見直した時に、この3つのバランスはとれているだろうか?
財政的な課題、人材の課題など様々な要素がある中で、一部だけの取り組みと
なってはいないだろうか?

どれも重要な課題だ。それぞれのバランスもあるし、つながりもある。

例えば、

・ICTを活用した指導法の改善は、教師が活用する場面から取り組むところが
多いが、さらに、子ども達が活用することで学びを確かなものにしていく
という取り組みも必要になる。

・子ども達がICTや情報を活用するようになると、情報活用能力を育てることも
欠かせない。

・情報活用能力は単にコンピュータなどの機器や、ソフトウェアの操作だけで
終わらず、そこで扱われる情報そのものを扱う力としても必要になる。

・情報の扱いは、各教科の学習の中にも多くあり、情報モラルの一つの要素である
著作権などについても指導する必要がある。

・情報モラルというと、情報安全に目が向き否定的な指導になりがちであるが、
もっと肯定的に「情報社会における正しい判断や 望ましい態度を育てること」
を目指すことは情報モラルキックオフガイドに書かれている。

・情報安全の一部でもある情報セキュリティは、校務の上でも重要な課題である。

・校務の情報化は、コンピュータで処理することは手段であり、転記・清書を
電子化することを越えて、教育の質的改善ができるようにしていくことが
目標である。

上記のようなことについてバランスはとれているだろうか。
一生懸命に取り組んでいると、全体のバランスを俯瞰することは難しい。
時折振り返り、バランスよく教育の情報化に取り組むことが、教育本来の目標
「人格の完成」につながっていくのではないだろうか。

西田先生

柏市教育委員会 教育研究専門アドバイザー。
元 千葉県柏市立柏第二小学校長、千葉県公立小学校教諭、教頭、校長、
柏市教育委員会指導主事を勤め平成29年3月に定年退職。
2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会委員をはじめ、
文部科学省の委員を多数務める。

主な著書
「だれもが実践できるネットモラル・セキュリティ」(共著)
「学校の情報セキュリティ実践マニュアル」(監修) など

一覧へ戻る


PAGE TOP