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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2013.03.28

メディア社会を生き抜く力 ~読み解く力、見抜く力~

新聞やテレビ各社は刻々とニュースを伝え、私たちは社会の出来事、
地球の裏側のことまで広く知ることができる。
ところで、映し出された映像や書かれた文章、語られる言葉は
どのような文脈で構成されているのだろうか?
新聞やテレビ映像などの報道は何を、なぜ、どのように編集されて伝えられて
いるのだろうか?
記事の文章や言葉、映像の内容を理解するには国語力や映像言語力が求められる。
しかし、文章や映像を詳細に分析するだけでは、どのような意図をもって情報を
編集し伝えたのか、情報の何に触れていないのか、何を伝えていないのかは
わからない。
いったい、なぜ、どのような判断で、伝えたり伝えなかったりするのだろうか。
その理由は、短期長期にわたってそれを取り巻く社会的背景にまで視界を
広げなければわからない。マスコミが伝える情報だけの世界にいると、
いつの間にか大きく偏った考えを信じるようになるかも知れない。
インターネットの発展は、いろいろな立場や考えの市民が互いに意見を表明
し合うことを可能にした。求める情報を漏れなく集め閲覧することを可能にしたが、
自分の関心事以外の情報には出会わないことも多い。
世の中のコトや人々の多様な考えを見渡しているつもりでいても、
知らず知らずのうちに、情報収集に偏りができてくることになりかねない。
メディア社会には、例えば、テレビ局、新聞社などのマスコミ業界と新しい情報・
IT業界、世代間、大都会と地域社会の異なる価値観と課題、環境と経済に関しての
エネルギー問題、既存の大きな組織と小グループや個人の意見、政治や宗教など、
複雑な関係を背景にもつ多種多様な情報と発信者が存在している。
それぞれの言外にある価値観、社会的立場や利害関係などについて見抜き、
情報発信の背景までをも読み取るためには、批判的に読み解く力が欠かせない。
これまで見えなかった声なき声までもが表世界で縦横に飛び交い、
情報の地下水脈が社会の地殻変動まで起こし得るメディア社会にあって、
小さな行き違いと大きな嘘の渦巻く世界に自分自身も居ることを忘れてはならない。
正解だと思っても、それは誰かの正解でしかない。
「情報の本質とその背景を理解し、正解の見えない決断をして一歩踏み出す力」を
開発するための基本的な教育はどうあるべきなのだろうか。
この混沌は闇の淵なのか、希望の生まれる泉なのか。
メディア社会を生き抜き次世代にバトンを手渡すために、市民自身が生涯にわたり
学習し続けることが求められている。
学校内外での教育担当者の力量が問われ、責任はますます重く期待は膨らむ。
広く地域社会や家庭、経済界・各種団体と連携し、日々の膝詰め交流と具体的で
継続的活動の中で、自分自身を切磋琢磨する学びの価値を見直そう。
現実社会の中に課題があり身近な社会の縮図の中に答えがある。
この活動こそが、最大多数の正解を見極め健全なメディア社会を創る一歩一歩であり、
その現場でこそ目指すべき目標が見えてくるはずである。

武田先生

1958年札幌生まれ。札幌市立大学デザイン学部デザイン学科メディア・デザイン コース 准教授。北海道教育大学大学院教育学研究科修了。北星学園女子短期大学専任講師・助教授、北星学園大学短期大学部教授を経て2008年から現職。北海道学校・家庭・地域の連携による教育活動促進事業推進委員会会長。日本教育工学協会(JAET)理事。教育とコンピュータ利用研究会(ACE)副会長・北海道支部長。専攻は、メディア教育、教育工学、企画デザイン。

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