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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2013.06.03

学びを拓く「情報活用能力」

私が小学校・中学校での情報メディア活用にじっくり接する機会を得たのは、17年前、宮崎県西米良村でのことになる。
当時、西米良村の村所小学校、越野尾小学校、西米良中学校では、教育長のリーダーシップの下、ほかの地域に先んじて情報メディアを積極的に活用していた。

西米良村のある児童の、授業中での発言に忘れられないものがある。
それは、「コンピュータを使うよりも伝わるから、人形劇で発表する」というものだった。周囲の児童が、コンピュータ(当時の主なOSはトロン)を利用したプレゼンテーションに取り組む中で、自信を持ってメディアを選択した場面であった。

西米良村では当時、児童自身が、課題解決とメディアとの組み合わせを評価していたと言える。後に、私たちは卒業生(当時の小学校1年生から中学校3年生)に対する追跡調査から、西米良村での小中連続した多様な情報メディア活用による教育効果を確認した。

自身の学びを拓く時に、たまにはデジタル技術を突き放す判断をしながら、メディアを選択してゆく場面へ到達させることの重要性を感じる。

私の最近の学校支援の一つに、平成23年度からの、鹿児島市立山下小学校での情報メディア活用がある。電子黒板はもちろんのこと、新たなテクノロジーを意欲的に活用し、「思考の練磨」をキーワードにした学力向上に取り組んでいる。

実は、この山下小学校の児童にも、西米良村で目にしたような姿勢を見ることができた。

最近の学校支援の一つに、平成23年度からの、鹿児島市立山下小学校での情報メディア活用がある。電子黒板はもちろんのこと、新たなテクノロジーを意欲的に活用し、「思考の練磨」をキーワードにした学力向上に取り組んでいる。

実は、この山下小学校の児童にも、西米良村で目にしたような姿勢を見ることができた。

タブレット型端末やデジタルペンの利用により、記述に必ずしもキーボード操作を必要とせず、手元での操作・描画が電子黒板などにより拡大・共有され、学習活動の様々な場面にムリなく情報メディアを活用する授業が展開される。
そのような学びの中で、自分の記述が、「どのように表示されているのか」、「それがわかりやすい内容になっているか」時には席を離れ確認する姿がみられる。

ただ使うだけでなく、表示のされ方やそれを見た反応を見極めようとする姿勢は、活用する目的、そして「学び」のねらいが明確であるとき、表れるものである。
山下小学校での情報メディア活用が学力向上に寄与している可能性を示す場面と振り返っている。

さて、前述したようなメディアに対する「学習者の目」は、どのように育ったのであろうか。まずは、ある程度の期間を要していることは間違いない。
使い慣れてこそ、判断や工夫ができるのは当然である。
次に、「学び」にメディア活用を取り入れるねらいが、教育委員会や学校といった組織単位で明確であり、さらに児童生徒と共有を図る工夫がなされているのが、共通しているように思える。

今日、知識基盤社会やグローバル化といった情勢の中で情報メディアを課題解決に生かす能力が「学力」の一部として国内外で再評価されつつある。
OECDの学習到達度調査(PISA)も、コンピュータ活用型への移行が予定されるなど、今後は、「学力」そのものと「情報メディアを自分の学びの課題解決に活かす能力」の関連を考えた展開が必要になる。

今日あらためて注目されている「情報活用能力」は 「習得型の学力」や「探究型の学力」と相乗するものであり、周囲と協働しながら、学びを拓く学力として機能するものであろう。

新地先生

宮崎大学大学院教育学研究科 教授、日本教育工学協会(JAET) 理事。 ICTの統合的・計画的利用による教育経営プログラムの開発や、 教師への情報メディア活用の推進などを研究テーマとして掲げている。

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