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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2013.06.12

情報モラルは心の教育からも

■ まねぶ

「学ぶ」は「まねぶ」や、真似から始める学びではあるものの、
ネット上にあるレポート例を丸ごとコピーして提出されては困る。
引用を明示していても、自分の考えが見られないのは困る。
といっても、引用と本人の考えが混在しているのも困る。
モラルや引用した人への敬意がないようでは、学ぶ姿勢を問われてしまう。
参考にしたなら参考文献を、引用したなら「」で示し、出典を記すなど、
今の時代だからなおさら、基本的なレポートの書き方とルールを、
きちんと身に付けるべきであろう。真似て始めたとしても、
公表するものはオリジナルでなければならない。著作権を無視したり、
引用の作法を誤ったりして、処罰を受けたり、
社会的な信用を失墜したりすることも、当然心得る必要がある。

■ デジタルネイティブ

今の若者は、デジタルネイティブと言われている。
生まれた時、すでにデジタルの世の中であり、ケータイやネット、
スマホがごく普通に身の回りで使われている。
時間をかけて筆記して写すという行為を知らない今の若者には、
コピーすることが普通であり、著作物のありがたさが
感じられないのかもしれない。
簡単にネット上からコピーして編集したものでも、活字となって
打ち出されると見栄えがよく、あたかも素晴らしいレポートを
作成した気持ちにでもなってしまうのではないか。

■ 著作権

新学習指導要領では、「情報モラル」が道徳に位置付けられた。
また、文部科学省は、情報モラル教育を体系的に推進するため
「情報モラル指導モデルカリキュラム」(平成19年5月23日)を示し、
指導内容を5つの分類に整理している。
著作権はこの中で「情報社会の倫理」に位置付けられている。

「この例では断りなしに使ってもよい」「学校の先生は例外的に断りなく使える」
という著作者の権利を大切にしなくてはならない。
情報化時代での著作権の歴史はまだ浅いため、
著作物を保護するという根本的な考え方を承知しないで、
禁止の決まりと考えている状況もありはしないか。

親や先生など、子どもの周りにいる者が実際にどこまで著作権のことを
理解しており、子どもたちに伝えているのかも定かではない。
「周りの人もそうやっているから」「そうしている人が多いから」という
安易な判断がなされていることも、問題を複雑にしている一因ではないだろうか。
親や教師から率先して学び始めるべきではないか。

■ 情報モラルは知識、安全、心の教育で

情報化の新しい時代を生き抜くには「情報についての知識の教育」と
「情報に対する安全教育」は最低限必要である。

しかし、これに加えてもう一つ、悪いとわかっていても
「一度ぐらいはやってもよい」でなく、「誰に見られていなくてもしない」
という正義感を持ち、また、著作権を侵害した場合に及ぼす影響の大きさを考え、
踏み止まることのできる子どもを育成する「心の教育」も必要である。

情報は一度公表すると、瞬時に不特定の人に伝わり、
独り歩きを始めるとともに回収が不能である。
情報を送る相手の気持ちや影響が及ぶ状況を察したり、気付いたり、
感じ取ったりする子どもを育てる道徳の教育が必要不可欠である。

教え込んで「わかったか」という知識理解を重視した理屈だけの教育でなく、
子どもの気持ちを大切にし、話し合いを中心に据えた道徳の授業を展開し、
気まずいことになってドキドキする気持ち、大変なことになりそうで
ハラハラする気持ちを共感し、思いやり、相手を意識できる心も育てたい。

そして、望ましい情報社会をワクワクしながら創造できる子どもにしたい。
回り道のようであるが、他に方法がないのかもしれない。

平松先生

環太平洋大学 次世代教育学部 教育経営学科 特任教授

略歴
 岡山県生まれ
 岡山市内中学校教諭、岡山大学教育学部附属中学校 文部教官教諭
 岡山県教育センター指導主事、岡山県情報教育センター研修課長、同次長
 岡山県教育庁指導課参事(IT教育担当)
 岡山市立藤田中学校長、岡山市立岡北中学校長を経て現職
主な活動
 文部科学省「教員のICT 活用指導力の基準の具体化・明確化に関する検討会」委員
 岡山県中学校教育研究会理科部会会長、岡山県中学校教育研究会情報部会会長
 岡山県教育工学研究協議会会長、岡山学校情報化研究会会長
 岡山県中学校長会会長 を歴任
書籍(編著)
 堀田・平松 「学校で取り組む情報社会の安全・安心」,三省堂,2010.9.
 横山・平松他 道徳用読み物教材「想いとどけて」,広教,2011.3.
研究分野
 情報教育,情報モラル教育,理科教育,教育工学

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