2013.12.02
今、学校で子どもは真剣に取り組みたくなるような課題が与えられているか
もし、子どもたちが真剣に取り組みたくなる課題を、学校でほとんど
与えられていないとすると、教育の情報化はまだ必要ではなく、たとえ無線LANと
1人1台端末などのインフラが整えられても、その試行錯誤は持続する可能性がある。
現実では、アナログコンテンツとオフラインで複数の人と協力して解決する課題
だけではなく、「デジタルコンテンツ」と「オンラインコミュニケーション」も
活用して解決できる課題もあり、より難しく重要な課題ほどICTを活用する
場合が多い。そのため、学校の中で子どもが真剣に取り組みたくなるような
課題を与えられる教育内容と評価、そして制度が整えられ、その学校文化が
育まれる必要がある。そうでない場合、デジタルコンテンツとオンライン
コミュニケーションの教育は、子どもによい影響よりも、よくない影響を与える
恐れがある。今の日本では、学校の中で日常的な生活とイベントにICTを
取り入れること(例えば、学級新聞・放送、遠足の企画案公募、学校ホームページ
の教授学習と保護者への案内・連絡などへの活用など)を躊躇している。
それなのになぜ、教科書のデジタル化などのように、教科授業の中にICTを
入れようとしているのか。前者ができてない以上、果たして後者が
上手く定着するか疑問になる。
なぜなら、子どもが真剣に取り組みたくなるような課題がほとんどない状況
での教育情報化は、既存の教師による知識獲得、そして結果中心の教育を強化
させる可能性があるためである。そして、情報教育の先進国と言われている
韓国もその例外ではなく、最近は効果と効率、そして依存などの批判の声が高い。
韓国の教育情報化は日本より進んでいる。無料で質が高い教育用デジタル
コンテンツを国から提供されているので、授業でデジタルコンテンツを使うことに
慣れるようになったといえる。例えば、EDUNETは1996年から、サイバー家庭学習は
2005年から、e-教科書は2011年から全国の学習者と教師に提供されている。
そして、全国の小中高校には標準化された学校行政情報システム(NEIS)が
完備され、2002年から提供されているので、教師のICT操作能力と
ICT活用教授能力の向上に寄与した面も言及したい。
また、韓国の小中高校の70.5%は100Mbps以上の超高速インターネットに
繋がっている(2011年)が、日本の小中高校の71.3%が30Mbps以上の超高速
インターネットに繋がっており、子どものデジタル読解力(DRA)は、
韓国は1位、日本は4位(OECD2009)、PC1台あたり学習者数は、韓国は4人、
日本は6人である。最後に、韓国には教育情報化の事業と研究を統括する
国立の専門機関(韓国教育学術情報院)がある。
しかし現在、韓国のコンテンツとインフラの質、そして教師のICT活用教授能力
などを高めるために様々な政策が企画され取り組まれているが、その背景には、
大学の入試制度を含めた教育課程、そして学校文化を革新しなければならない
という目標があるといえる。例えば「スマート教育推進戦力」の目標は
「教室革命」と書かれており、その方法として教育内容、教育方法と評価、
教育環境、教員の力量、クラウドインフラに関する政策を進めている。
教育のパラダイムが変わっている現在、その流れに取り残されるのではなく、
逆にリードしなければならない切迫感も読み取れる。
このような韓国の取り組みについて、韓国の情報教育の量的な数値だけではなく、
その中の緊張とビジョン、そして試行錯誤のプロセスも参考にする必要が
あると思う。幸い、韓国と日本の子どもはICTに慣れており、既にICTを活用して
21世紀型能力を育む力量(DRA)は持っている。
課題は子どもを取り巻く教師と学校、そして教育内容と評価などの学校文化にある。
Mr. Cho, Kyubok
韓国教育学術情報院政策研究部の研究員。広島大学大学院教育学研究科修了。
ICT機器とデジタルコンテンツを活用した教授学習のプロセスと実態を研究しており、最近はスマートメディア活用授業の実態、SNSのオンラインコミュニケーションによるコミュニティ形成の特徴、韓国と日本のICT活用授業実践記録の分析に関する研究を進めている。