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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2014.04.01

【1/31】学びのイノベーション&セキュリティセミナー レポート(1)

1月31日と2月7日に、JAPET主催 情報教育対応教員研修全国セミナー
「学びのイノベーション&セキュリティセミナー」が開催されました。

テーマは「『一人1台の情報端末』環境へ向けて」。
全国から教育関係者、教育関連企業関係者など、多数の方にご参加いただきました。

今年は、栃木県小山市と大阪府大阪市の2会場で開催。
校務の情報化、授業でのICT活用などを研究、実践している先生方、自治体様より、
さまざまな実践報告や事例の発表をいただきました。

各講演について、簡単にレポートします。
まずは、栃木県小山市会場のレポートです。


【基調講演】21世紀型スキルを育む情報教育 ~一人1台情報端末の検討について~

富山大学 教授、ISEN(教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会) 委員長
山西 潤一 氏

「『教育の情報化』は何のためか」という目標をあらためて考えると、
それは「学習方法や教育方法の改善」である。
21世紀型スキルを育む環境は整いつつあるが、新しいICT機器が導入されたから
特別な教育方法を実施しようとしても、難しいものがある。
よって、今までの教育方法はそのままに、少し拡張してみるという考え方で取り組めばよい。

基礎基本の能力を向上させるために、まずは、今までのやり方にICTを取り入れて、
子供の興味関心を引くことや、ICTが得意な繰り返しの学習にも効果を発揮できる。
さらには、個に応じた学習へと発展したICTの使い方を進めていけば、
その先には、21世紀型スキルが求める「協調活動能力の育成と自己評価能力の向上」へと
発展が期待できる。

ICT活用をした指導の有無による知識理解の正解率では、
正解率が低いグループのほうがICT活用をした指導後の正解率の向上が著しかった。
諸外国でも、従来の指導法の拡張をICTを使って進めており、基礎基本をしっかりと教えながら、
その先にICTを使った徹底した個別学習や、一人1台環境でのグループ学習などを行い、
さらには学校と家庭がシームレスにつながり、宿題をモバイルでやるような
コンテンツの充実など、思考・表現・判断を養う指導の方法がデザインされている。

21世紀型スキルを育む教育はどうあるべきかと考えると、第一に、ICT環境は
一人1台とした場合大切なことは、どんな学習方法を設計するのかということ、
第二に、教師の指導技術と教育方法開発が重要だということである。
従来型授業デザインの充実と、新たな授業デザインの開発をしなければならない。
第三に、技術的な側面としてICT支援員など支援人材の育成・雇用と、
無線LANの安全性も課題となってくる。
さらには、管理職のリーダーシップも重要であり、ビジョンを学校全体で共有して
情報化を進めていく必要がある。

しかし忘れてはならないのは、どんなにインターネットが便利になり技術が進んでも、
最終的にはデジタルとアナログのバランス感覚が必要とされる。
近年では、経験や知識よりも情報を求め、情報を集めてわかったような気になってしまう
傾向があるが、経験値を増やし、知識を積み重ねた上で、情報をどう使いこなすか、
これこそが時代が求めるデジタル読解力へとつながっていくだろう。


一人1台環境を見据えたICT支援員のあり方について

上越教育大学 教授 石野 正彦 氏

現在、ICT機器の導入は進んでいるが、コンピュータの導入に懐疑的な教師や、
苦手意識を持つ教師が多い現状では、普通の教員が日常的に使えることが課題である。

日常的な活用を支援するためのICT支援員は重要な役割が期待されるが、雇用形態や
導入財源に課題がある。ICT支援員をどう学校で活用していくか、
期待する資質能力目標基準や評価の仕方をまとめた「ICT支援員ハンドブック」を作成(CEC)。

ICT支援員制度化については、文部科学省でもその必要性に言及しているが財政的な
施策がないのが現状。その他、2013年から「ICT支援員能力認定試験」がスタート。
ICT支援員を制度として学校現場に定着させるために、教育委員会の立場で、教員の立場で、
あらゆる立場で声をあげていくことが今最も求められていることである。


目指せ!日常的なICT活用 ~デジタル教科書・電子黒板の常設環境へ向けた、
5カ年計画の考え方と予算化の工夫~

茨城県土浦市教育委員会 学務課 係長 矢口 裕樹 氏
指導課 指導主事 中島 健一郎 氏

土浦市では、魅力ある授業、わかる授業を日常的に行うことの実践・実証を目指して、
普通教室に電子黒板、書画カメラ、短焦点プロジェクタ、ノートPCを導入する計画を策定。
予算と獲得するためにまずは情報化計画を策定。長期的なビジョンと事業との連動性が
重要であり、導入後に実践が伴わなければ継続的な予算獲得は難しいと考え、
教育情報化コーディネータ2級を持つ外部の人材に計画策定の支援を依頼。
実践されるイメージが持てる計画策定を目指した。

ICT機器の日常利用に向けた取り組みでは、子供たちにとっての授業のわかりにくさを、
ICT活用の仕方によっては、改善できることもあるという考え方で活用促進。
既習学習ではフラッシュ教材で確認、教師の話がイメージできるようにデジタル教科書や
電子黒板を使い焦点化する、できる生徒だけで授業が進まないように共有の方法を工夫
するなど、
ICT機器の使い方や指導の方法についても丁寧な研修を実施。ICT支援員と教育委員会と
学校とがうまく連携することも、ICT機器の日常利用には有効であると考えている。


教職員のセキュリティレベル向上のための「さがみはらスタイル」
~情報セキュリティ監査の全体像~

神奈川県相模原市教育委員会 学習情報班指導主事 篠原 真 氏
相模原市立弥栄小学校 教諭 黒木 祐輔 氏

2010年より市内全学校へ情報セキュリティ内部監査を実施している。
監査の目的は、セキュリティ対策遵守状況の点検と評価、教職員の意識向上を図るこである。
先生方の情報セキュリティに対する優先順位はそれほど高くないため、
教員間でコミュニケーションを取り合い「自分たちのために」と意識されるよう監査や
研修にも工夫を重ねている。

監査では、全職員への13項目のヒアリングシート提出と各学校への実地監査を実施。
実地監査では、指摘する点ばかりではなく、「良い点」にも注目して共有するようにしている。

研修では、ワークショップ型リスク脳トレーニングを取り入れ、参加者同士が
よく話し合ったり意見を言い合ったりと、参加意識が高く実施できた。
そのため、研修参加者評価は、以前の座学研修よりもワークショップ型のほうが高くなった。

これら取り組みを定期的に継続的に行った結果、情報セキュリティ監査により、
セキュリティポリシーの遵守状況が改善されていることがわかった。
情報セキュリティ研修を実施した学校では、セキュリティの理解度、遵守状況ともに
良好という結果になった。


リスク脳トレーニング

株式会社JMC 中谷 侑子 氏

学校内の身近な場面のイラストを見ながら、セキュリティ上のリスクについて考える
ワークショップ型研修の一部を、セミナー参加者全員で実際に体験。

グループ分けを行い、そのグループ内で「職員室」のイラストを見ながら、どのような
ところに危険性があるかを意見交換。最後はグループ発表を行い、他のグループの
同じような指摘や違う視点など、参加者各人がさまざまな気付きを得られていた。


開催概要

【日程】:2014年1月31日(金) 13:45~17:35
【会場】:小山市生涯学習センター
【主催】:一般社団法人日本教育工学振興会(JAPET)
【共催】:日本教育工学協会(JAET)、一般財団法人コンピュータ教育推進センター(CEC)
【協賛】:教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)、株式会社JMC
【後援】:文部科学省、総務省、経済産業省
栃木県教育委員会、群馬県教育委員会、茨城県教育委員会、小山市教育委員会、
水戸市教育委員会、 宇都宮市教育委員会、土浦市教育委員会

ISEN事務局

ISENは、研究者・企業の専門家などで構成された団体。学校の教職員の方の情報セキュリティへの意識啓発のため、 Webサイト、メールマガジンでの情報発信、調査・研究活動などを行っている。

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