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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

ISEN委員長 山西先生のコラム

2014.04.11

【教育の情報化が向かう先は?】日本の教育の情報化はどうなる?

 教育の情報化に先進的に取り組んできた英国と韓国について、
過去のコラムで紹介してきた。また、フューチャースクールの元祖シンガポール
についても紹介してきた。これら海外の学校を視察して一番感じることは、
当たり前のようにICTが授業で活用されていることだ。

 中でも英国は、フューチャースクールと違って、必ずしも1人1台の
タブレットPCが導入されているわけではない。公立の小学校や中学校を訪れて、
まず感じるのは、どの学校にも最低限、教室には指導者用PCと電子黒板があることだ。
教師は日常的に、学習指導でこれらのPCや電子黒板を活用している。

 こんな状況を見聞きしている筆者にとって、つい先ごろ、驚くべき発見があった。
毎年実施されている、「平成24年度 学校における教育の情報化に関する調査結果
(文部科学省)」の結果が公表された。ICT環境の整備状況と教員のICT活用指導力
についてのデータである。

 すでにご覧になった方も多いのではないかと思うが、コンピュータや普通教室
での校内LANの整備率も増加し、多くの学校ではインターネットを活用した授業が
日常的に行える環境が整っているように思われた。
教員のICT活用指導力のデータでも「授業中にICTを活用して指導する能力」が
あるという教員が68%、「児童のICT活用を指導する能力」のある教員が64%だという。

 少なくとも6~7割の教員は、何らかの形で日常の授業にICTを活用したり、
児童にICTを活用した学習を行わせていると、誰でも思うのではないだろうか。
もちろん、すべての教員が項目にあるICT活用指導力を持つことが望まれるが、
それも時間の問題だと思う、と考えていた。

 そんな時「平成25年度 全国学力・学習状況調査報告書」が、文部科学省・
国立教育政策研究所から公表された。各都道府県では、学力の順位が上がった
下がった、結果を公表する、しないなどと、マスコミをにぎわしたデータである。

 学力問題も大事であるが、筆者は「学習状況調査」の方にいつも関心があった。
その学校質問紙の項目に「コンピュータなどを活用した教育」がある。
「国語や算数・数学の授業において、普通教室でのインターネットを活用した
授業を行いましたか」、同じく「国語や算数・数学の授業において、発表や
自分の考えを整理する際に、児童生徒がコンピュータを使う学習活動を
行いましたか」という質問がある。

 上述した、インターネット環境や教員のICT活用指導力からすれば、
おそらく6~7割の学校が、何らかの形でそのような授業を行っているものと
誰でも考えるであろう。ところが、驚くなかれ、前者のインターネットを活用した
授業について「ほとんど、又は、全く行っていない」との回答が、
小学校国語で53%、中学校国語で78%、小学校算数で65%、中学校数学で82%であった。

 また、後者の児童生徒がコンピュータを使う学習活動では、同じく
「ほとんど、又は、全く行っていない」との回答が、小学校国語で44%、
中学校国語で70%、小学校算数で60%、中学校数学で77%というデータであった。

 インターネットが活用できる学習環境を整備し、ICT活用の指導力向上のための
研修を行っていても、学校では全く活用されていないではないか。
これは一体何なのか、どこに問題があるのだろうか。ICT活用で学力向上、
興味関心を高めるなどというのは、単なるスローガンなのか。教員の意識の問題か。
新しい学習指導要領には、ICTの活用に関する学習内容が随分埋め込まれてきている。

 ここで、教育の情報化先進国の事例を考えてみると、評価の問題が見えてくる。
英国では、Becta(英国情報教育振興機関)によって、各学校でのICT活用の実態を
評価する基準として「Self-Review Framework:自己評価フレームワーク」が
作られている。リーダーシップとマネジメント、カリキュラム、学習と指導、評価、
職能開発、学習機会の拡大、リソース、生徒の成績への影響などの8カテゴリ、
全部で83のチェック項目から構成されている。各学校で、ICT活用の成熟度が、
「何もしていない」「スタートを切った」「戦略を実施している」「安定している」
「向上心がある」の5段階でチェックするようになっていて、
国の目標として多くの項目で「安定している」への達成が求められた。
また、児童生徒のICT活用に関しても、英国やシンガポールでは、キー・ステージ
(英国の教育制度で、概ね日本の小学校の1年から3年、4年から6年、
中学校、高等学校に相当するものをキー・ステージの1から4とする)ごとに、
情報活用能力に関する具体的な達成基準が示され、その到達度で評価される。

 このように、教育の情報化の先進国では、ICT活用に関する評価基準が明確だ。
そして「教員、児童生徒、学校」すべてが、達成度によって厳しく外部評価される。
知識基盤社会を生きるための21世紀型スキルの修得が声高に叫ばれ、
教育の情報化ビジョンでその実現を図ろうとするが、
ビジョンを現実のものとする具体計画が求められる。
教員も日々の授業に、自らのICT活用指導力を活かしてほしいものである。

山西先生

富山大学 名誉教授。日本教育工学会(JSET)会長。日本教育工学協会(JAET)評議員会議長。教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)委員長。インターネットやコンピューターなどの情報通信技術を用いた 教育方法や学習環境の開発に関して、学校教育から生涯学習まで幅広く研究している。専門は、教育工学、情報教育。

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