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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2014.11.13

日常的なICT活用による授業改善の重要性

 この2カ月の間に、研究発表会や校内研修などで10校以上の学校を訪問し、
50以上のICTを活用した授業を参観した。フューチャースクールの小中学校、
パナソニック教育財団の特別研究指定校、研究開発学校といった研究校から、
一般の公立学校まで、多様な学校を含んでいる。
初めて訪問した学校もあれば、過去に数回訪問した学校もある。
いくつかの学校には、2年以上継続して訪問している。

 ある公立中学校は、2年間、市の指定を受け、教科指導における
ICT活用に関する研究を行った。約1年ぶりの訪問であったが、
生徒が実物投影機やPCで発表する場面が格段に増えていることに加え、
ペアやグループでの学習活動も取り入れられ、
どの授業でも生徒の活発な活動の様子が見られた。

 ある市の中学校4校を訪問し、英語の授業を参観すると、
どの授業でもデジタル教科書は活用されていたが、教師によって
活用するコンテンツ、場面、組み合わせる学習活動は異なり、
板書の内容やノート、ワークシートの使い方も各々工夫されていた。
一方、デジタル教科書の本文や単語の提示を伴った音声を活用した、
英語を聞く、話す活動は、どの授業でも充実していた。

 情報活用能力の育成をテーマに研究している学校では、
付箋やホワイトボードの活用が目に付いた。
個人、ペア、グループでの活用後、いくつかのホワイトボードを
直接黒板に貼り付け、子供たちの考えを整理することにも用いられていた。
また、情報活用の一連のプロセスを振り返ることができるように
ワークシートや、それらをファイリングしたポートフォリオが活用されていた。

 授業の写真を振り返って改めて確認できたことは、いずれの授業でも
デジタル情報の拡大提示に加え、板書が工夫され、充実していたことである。
この傾向は、一人1台のタブレット端末を活用した授業においても同様であった。

 ほかにも、授業から学ぶことは多くあったが、いずれの場合もICTの導入後、
日常的な活用を通して教師が自らの授業にICTを取り込み、
ICT活用の工夫のみならず、授業全体の改善を意識した取り組みが
継続的に行われてきた結果であろう。
おそらく、こうした取り組みの背景には、校内研修や授業研究、学年、
教科チームでの授業に関わる情報交換などがあったに違いない。

 一方、研究授業で、新しい機器や機能を初めて活用したと思われる授業には、
違和感を覚えることが多かった。
新たに導入したICTに、教師の意識が向けられ過ぎているように感じたのである。
研究開発的な取り組みの重要性は否定しないが、
日々の授業実践の積み重ねによる授業改善の重要性を改めて実感したのである。

 数年かけて、ICTを授業に統合するプロセスを経験しておくことは重要だ。
今後、新たなICT導入、能力の育成を目指したICT活用を行う際、
授業スタイルを変化させていく土台となるだろう。

野中先生

横浜国立大学教育学部卒業、横浜国立大学大学院教育学研究科修了。
横浜市立小学校教諭、和歌山大学教育学部附属教育実践総合センター准教授を経て、
現在、横浜国立大学教育人間科学部附属教育デザインセンター教授。
著書に「教育の情報化と著作権教育(編、三省堂)」、
「わかる・できる授業のための教室のICT環境(編著、三省堂)」など。
文部科学省「教育の情報化に関する手引」作成検討会委員、
「学校教育の情報化に関する懇談会」委員、
総務省「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会(2010)」構成員など。

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