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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2014.12.08

みんなで取り組む情報モラル教育

(1)情報社会の一面

不思議な光景が電車の中に広がる。談笑したり、本や新聞を読んだりするのは
一昔前の話になった。誰もがスマホやタブレット端末と格闘している。
学生は歩きながらメールや無料メッセージアプリのチェックに忙しい。

昨年はアルバイト中の学生が、店内での不適切な振る舞いを写して
ネットに投稿するという「バイトテロ」が注目された。
「軽い気持ちだった」、「悪乗りしてしまった」と言っても、
誰も許してはくれない。
事前に何らかの指導ができていたならと、悔やまれるばかりだ。

学生たちのその後を知る由もないが、あまりにも大きな代償を支払ったことは
想像に難くない。「こんなことになるなんて」、「そんなつもりじゃなかった」
と思っても後の祭り。一度ネット上に流出した情報は、発信者の意図とは
関係なく一人歩きする。それがインターネット社会というものだ。

とは言うものの、学生だけが代償を支払わねばならなかったのか。
大人や社会に責任はなかったのか。
急速に進展する情報社会で、私たちは何を大切にし、何を守ればよいのだろう。

(2)指導を受けないままに

道具は使い方一つで便利になったり、凶器になったりする。
はさみも包丁も、もろ刃の剣。しかし、私たちは、親兄弟、友達や先輩を見て、
これらの道具をうまく使ってきた。

しかし、デジタルネイティブにとってスマホやタブレット端末は、
怖さも抵抗感もない。むしろ便利で面白い道具である。
与える親から見ても、はさみや包丁のような尖った部分が見えないだけに
危険性を意識し難い。

しかし実際のところは、少々勉強したところでよくわからない複雑な代物である。
どこにデータがあるのか、いつ通信しているのか、使っている本人でさえ
意識できなくなってきている。
メモ帳のように自分だけのために記録したことや、
友人間だけの思い出の写真までも、気が付かない間に
ネット上にアップしてしまっていることもあるだろう。

(3)今すぐできること

学校ではすでに基本的な知識や、情報端末、情報社会と安全に付き合うための
基本的な考え方や使い方など、情報モラルの指導は推進されつつあるだろう。
しかし、一斉指導には限界もある。
一人ひとりの子供に合わせたきめ細やかな指導ができないからだ。

そこで、学校から、PTAに提案できないだろうか。
少し前まで、「〇〇時以降、夜遅くに電話するのは遠慮しよう」とか、
「友達の家にお邪魔するのは〇〇時まで」という取り決めがあったように、
保護者同士で子供たちの使い方について約束があってもよいのではなかろうか。
「みんな持っているから」、「みんなやっているから」という
言葉に負けない保護者になっていただくために。

学校からは、学校や地域の実態に合わせて、これまで以上に丁寧に
情報提供をしていただきたい。保護者は、情報社会の危うさに気付き、
「何とかしなくては」と考えて、保護者同士で具体的な約束を模索して、
家庭も情報モラル教育の体制づくりに一役買っていただきたい。

情報モラル教育の特効薬はないかもしれないが、
あの手この手で子供たちを守り、導き、強い心を育て、
望ましい情報社会を作っていきたい。

平松先生

環太平洋大学 次世代教育学部 教育経営学科 特任教授

略歴
 岡山県生まれ
 岡山市内中学校教諭、岡山大学教育学部附属中学校 文部教官教諭
 岡山県教育センター指導主事、岡山県情報教育センター研修課長、同次長
 岡山県教育庁指導課参事(IT教育担当)
 岡山市立藤田中学校長、岡山市立岡北中学校長を経て現職
主な活動
 文部科学省「教員のICT 活用指導力の基準の具体化・明確化に関する検討会」委員
 岡山県中学校教育研究会理科部会会長、岡山県中学校教育研究会情報部会会長
 岡山県教育工学研究協議会会長、岡山学校情報化研究会会長
 岡山県中学校長会会長 を歴任
書籍(編著)
 堀田・平松 「学校で取り組む情報社会の安全・安心」,三省堂,2010.9.
 横山・平松他 道徳用読み物教材「想いとどけて」,広教,2011.3.
研究分野
 情報教育,情報モラル教育,理科教育,教育工学

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