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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2015.02.13

高校の遠隔教育とICT

 私は、昨年2014年に発足した文部科学省の協力者会議で、
「高等学校における遠隔教育の在り方に関する検討会議」の委員になった。
座長という立場で全体の方向を取りまとめる役を頂いたが、
6回のすべての会議で、大いに勉強になった。

 私と高校の遠隔教育の関わりは、北海道の礼文島にある高校の遠隔教育に
関わったことが、きっかけである。少し事情を説明する必要がある。

離島や過疎地では、少子化の影響で、当然ながら高校生の数が少ない。
高校に限らず、すべての学校の教員数は定員法によって、
児童生徒数で決められている。
それは、経済原理だけでなく、一般社会の常識から
考えても仕方ないことであろう。

しかし、現在の高校の科目は、実に幅広くなっている。
高校を卒業した半数の生徒は、複雑化している社会に出ていくので、
その準備期間としての高校のカリキュラムは、多様化せざるを得ない。
大規模の高校は、すべての科目に対応した教員を配置することができるが、
少規模の高校では、すべての科目を教えられる教員を充足することができない。

高校教員の免許は教科によって与えられるので、免許を持つ教員がいても、
専門でない科目を教えることは極めて困難である。
たとえば、大学で物理を専攻した教員は、物理に近い地学などは
自学して教えることはできても、生物を教えることは無理であろう。
北海道の礼文島にある高校も、そのような状況にあった。

そこで考えられたのが、インターネット、特にテレビ会議システムなどを
導入して、北海道の大規模校と礼文島にある小規模校を結び、
大規模校の教員の授業を小規模校に配信することだった。
つまり遠隔教育を実施することが、その解決案になった。

 しかし、ここに問題が生じる。全日制や定時制の高校では、
このような遠隔教育で単位を与えることが法令上認められていない。
通信制では認められているが、全日制や定時制は、その趣旨から
対面で授業を受ける、対面で出席を確認する、
対面で試験をして評価することなどが前提になっているからである。

そこで、現行の教育課程、学習指導要領の規定の範囲外で実施するには、
教育課程特例校や研究開発学校の指定を受ける必要がある。
私は、文部科学省の研究開発学校協力者会議の委員であり、
この北海道の高校の審査などを行ったことが、この教育に関わるきっかけになった。

 「高等学校の遠隔教育」の協力者会議は、その意味で極めて
興味深かったと同時に、インターネットやICTの素晴らしい活用方法であることが、
なにより嬉しかった。それは、本当に教育に役立つICTの活用である。

高校卒業単位の74単位の半数近くを、遠隔教育で実施してよいという
方向性を決めて、文部科学省の省令を変える方向で、議論はまとまった。
そして、この改革が、少し誇張して言えば、
今の日本の教育を大きく前進させるのではないかと思った。

現在の少子化は、ますます加速される。
地方に行くと、町の商店街は、文字通りシャッター通りになっている。
過疎化はさらに加速し、若い人たちは都会に出て、
日本は過疎地と大都会という2極化が進行しつつある。
地方の町や村にとって、高校生のような若者がいること自体が、
地域を活性化させる原動力になることは言うまでもない。

若者は地域の宝であり、その存在自身に大きな意味がある。
その意味で、地方の小さな高校が、決して廃校や都会の大規模校に
統合化されるようなことがあってはいけない。
高校生のような若者が地方にいること、それは地域の人々によって、
まぶしいような明るさであり、安心感がある。
そこに、ICTが役立つことは、素晴らしいことである。
なお、第5回の検討会議の様子は、NHKの夜7時のニュースで放映された。

赤堀先生

白鴎大学教育学部 教授・学部長、教育テスト研究センター 理事、
東京工業大学 名誉教授、(財)コンピュータ教育開発センター(CEC) 理事長、
(社)日本教育工学振興会(JAPET) 理事、日本視聴覚協会 理事、
(財)パナソニック教育財団 常務理事、日本教育工学協会(JAET) 常任理事。
教育工学を中心に様々な教育実践、教育研究に取り組んでいる。

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