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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2015.04.03

TPPと著作権(2)

前回はTPPと著作権に関して、著作権の保護期間の延長についての内容でした。
もう一つ大きな問題は「著作権侵害の非親告罪化」です。

日本の法律では、著作権の侵害は被害者(著作権者)が親告して
初めて罪となります。これを「親告罪」といい、明らかに著作権法違反であっても
著作権者が訴えない限り、違反者は摘発されません。
そして、被害者の訴えがなくても立件できるのが「非親告罪」です。
米国などはそうで、TPP参加国で「親告罪」なのは日本とベトナムだけです。

著作権を保護するためには「非親告罪」の方が良いと
お考えの方も多いと思います。筆者もその一人なのですが、懸念があります。
非親告罪にすると、警察の判断で捜査対象が広がる恐れがあります。

たとえば、近年日本でもハロウィンで仮装する人が増えて、
渋谷のスクランブル交差点が混乱するということもありました。
しかし、現在の道路交通法では混乱を避けるためであっても
歩道にいる人は逮捕できません。

著作権侵害が非親告罪化すれば、仮装でアニメや映画のキャラクターに
扮した人は著作権法違反となり逮捕が可能となります。
もっとも現時点での情報では「権利者の市場での活動に影響を与える
場合に限る」という条件が付きそうですので、問題はなさそうです。

ここで重要なのは、非親告罪とする必要のある悪質な場合と、
非親告罪化すべきでない悪意のない場合の切り分けです。

国内の法整備をきちんとすれば、コミックマーケットなどの
アニメファンの集いや市民マラソンなどで行われているコスプレは
許容範囲内かと思われますが、パロディといわれるような作品は
影響が大きいと考えられます。今後のTPPの展開が気になるところです。

ISEN副委員長 井上

株式会社JMC
APPLIC(一般財団法人全国地域情報化推進協会) テクニカルアドバイザー。
校務情報化や情報モラルに精通し、文部科学省や総務省の委員会や委託事業にも参画している。

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