2015.06.15
ネット社会とコミュニケーション能力
私が仕事帰りに乗る電車がS駅を通過する時刻は、ちょうど高校生が
下校する時間帯で、駅のホームには大勢の高校生が電車を待っています。
その大半の高校生は、スマートフォンに目を落とし、
無言で指を動かしているのが見えます。
ホームを埋め尽くす高校生の話し声も笑い声もなく、
シーンと静まり返った駅のホームが不気味に感じるくらいです。
電車内で、スマホを使う会社員や女性、歩きスマホをする学生たちの姿は
見慣れていますが、駅のホームに立つ彼らは不思議でした。
ある日、私は「スマホで何をしているのだろうか?」という好奇心から、
途中下車して隅から隅まで横目で観察をしてみました(ゴメンね!)。
多くの高校生はゲームをしたり、情報を探したり、アニメを見たり
しているように見えました。そのほか、メールやLINEでのチャットか、
SNSでコミュケーションをしている高校生も多いように見えました。
彼らにとって、スマホは格好の遊びや情報ツールであるとともに、
友人たちとのコミュニケーションツールであることも確かだと思いました。
しかし、ある調査(※1)では高校生の半数以上が友人らとの
関係を十分に認識しつつも、メールが入ったらすぐに返事をしなければ
ならないというプレッシャーを感じているようだとも書かれていました。
多くの高校生は、ネットによるコミュニケーションの大切さを
認識している反面、ただそれだけではコミュニケーションの
力が付くとは思わないと考えているようです。
つまり、彼らはICTメディアの便利さやメリットを
ただ評価するだけではなく、冷静に見ている傾向も読み取れました。
メールやチャットは、短い言葉で情報を相手と伝え合うのに、
極めて利便性の高いコミュニケーションツールです。
これは誰もが認めているでしょう。しかし、コミュニケーションと
一口に言いますが、相手や目的・内容によって、その手段方法を
考え・選び・使う判断力や能力が大切だと考えています。
単に情報を伝え交えるだけではなく、お互いの意思の疎通と
心の通い合いがコミュニケーションの根源にあると
忘れてはならないと思うのです。
今日のネット化社会においては、多様化しそれぞれ長所短所を持つ
コミュニケーションツールを、相手や目的に応じて、
判断し・選び・使い分ける能力が不可欠です。
それは、単に学校教育だけの問題ではなく、ネット利用によって
引き起こされる社会問題への対応を含めて、生涯学習課題として
コミュニケーション能力の育成に努める必要があります。
※1 ベネッセ教育研究開発センターアンケート調査 2014
松田先生
現職:全国視聴覚教育連盟 常任理事・専門委員長、能力工学開発センター 評議員
所属学会:日本教育メディア学会
千葉県公立小中学校教員・校長、旭市教育委員会学校教育課主幹、
千葉県教育庁教育放送室主査、旭地域教育情報センター所長、
千葉県情報教育センター常勤講師、
文教大学教育学部・東京家政大学家政学部非常勤講師として勤務。
その間、日本教育工学振興会参与、日本視聴覚教育協会評議員、
文部科学省生涯学習審議会専門委員、初中局学習用ソフトウェア調査研究協力者、
文化庁著作権分科会小委員会著作物の教育目的の利用に関するWG委員などを務める。
主な著書:
情報教育実践ガイド(共著)、コンピュータやインターネットを利用した学習の計画と実践、
情報活用の実践力を育てるーインターネット利用の実践(共著)など