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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2015.08.03

ネット社会の情報モラル

仮にK先生としますが、K先生は郷土史研究家で、
ある市の総合教育センターで地域の歴史についての講座や、
フィールドワークを行っています。
受講者は、社会教育関係者と小中学校の社会科研究会の先生方です。
私も講座を受け持っているのですが、ある日、私の担当する講座まで
時間に余裕があり、K先生の講座を少しだけ傍聴した時、
よく見かける光景が目に入りました。
それは、受講者の中に講座の様子をデジタルカメラで動画撮影したり、
スマートフォンで写真を撮っている方がいたことです。
また、講義の中で提示されている顔写真入りの資料や、
古民家を見学した際の写真を勝手に撮っている方もいました。
後日聞いた話ですが、受講したある中学校の先生と社会教育指導員の方が、
K先生の顔写真入りの資料や古民家について説明している写真を、
承諾なしにネット上に投稿されていたそうです。

講義の様子を動画や写真に撮っていたことは、K先生が暗黙のうちに
承認されていたと解釈しても、後者の顔写真入りの資料や
古民家見学のスナップ写真を無断でネット上に投稿した行為は、
文字通り「肖像権(プライバシー権)の侵害」と言われても
仕方がないと思うのです。
K先生を畏敬する気持ちからの投稿であると理解できますが、
少なくとも児童・生徒や社会人の方々の指導に当たる者としては、
やや軽率ではないかと思ったのです。
投稿した方は「肖像権(プライバシー権)」として、
人は他人から無断で自分を写真に撮られたり描かれたりされない権利と、
撮られた写真や描かれたものを無断で公表・利用されないように
主張する権利を持っていることは多少なりとも知っていると思うのです。
それもさることながら、投稿した二人の方の情報モラル観が
問われるような気がするのです。

情報教育の柱である情報モラルとして「自分の情報や他人の情報を
大切にする」、「相手への影響を考えて行動する」、
「自他の個人情報を第三者に漏らさない」ことは極めて重要です。
今、私たちの周辺を見回すとスマホやタブレット端末、
そしてデジカメなどを使って、写真や動画を撮り、
友人や家族にネットで送ったり、ブログや動画サイトなどで
情報公開したりすることが日常化しています。
ネット社会における学びや暮らしの利便性が高まる中で、
ここで述べたのは、何気ない小さな事例ですが、
一つ間違えると個人を大きく傷付けてしまいかねません。
児童・生徒や市民の方々の情報活用能力の育成に携わる先生方や、
社会教育指導者の方々には、自身の情報モラル観を
再確認していただきたいと思うのです。

松田先生

現職:全国視聴覚教育連盟 常任理事・専門委員長、能力工学開発センター 評議員
所属学会:日本教育メディア学会

千葉県公立小中学校教員・校長、旭市教育委員会学校教育課主幹、
千葉県教育庁教育放送室主査、旭地域教育情報センター所長、
千葉県情報教育センター常勤講師、
文教大学教育学部・東京家政大学家政学部非常勤講師として勤務。
その間、日本教育工学振興会参与、日本視聴覚教育協会評議員、
文部科学省生涯学習審議会専門委員、初中局学習用ソフトウェア調査研究協力者、
文化庁著作権分科会小委員会著作物の教育目的の利用に関するWG委員などを務める。

主な著書:
情報教育実践ガイド(共著)、コンピュータやインターネットを利用した学習の計画と実践、
情報活用の実践力を育てるーインターネット利用の実践(共著)など

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