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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2016.08.12

でっかいデジカメ(1)

情報教育に携わる関係者が集まったときに「でっかいデジカメ」という
言葉が使われることがよくある。
この文章を読んでおられる方は、情報教育に関心をお持ちの方が多いと
思うので「ああ、あのことか」とお気付きだと想像する。

タブレット端末を「でっかいデジカメ」と表現しているのである。

良い意味で使われているのではなく、タブレット端末を導入したが
活用が低調な場合に、揶揄的な表現として使われている場合が多い。

もう少しきつい言い方をすると、
現場に導入されたタブレット端末が画像収集用のツールとしてしか、
使われていないことへの危惧の意味を込めた表現である。

倉敷市では、タブレット端末の導入はまだなされていない。
実証実験校としてタブレット端末を平成23年度から3年間使用した。
私の経験からすると、導入段階では「でっかいデジカメ」で
良いのではないかと思っている。

いや、むしろ指導者にとっても児童にとっても、馴染みやすく、
利用しやすいツールとしての機能は、やはり画像収集だと思っている。

まずはタブレット端末に慣れて、便利な機械であることを認識するには、
手に取って実際使う場面をどれくらい設定できるかが、
それ以降の利用に大きなポイントになってくることは、確かである。

では、どんな場面での活用が導入以降のタブレット端末の活用に
有効に働くのであろうか。

これについては、いくつもの先行的な取り組みの中で報告されている。
たとえば、理科の自然観察での使用、児童生徒のノートを撮影しての拡大表示、
体育でのマット運動でのスキルアップなど。

全国各地からすばらしい実践が報告されている。
「写して、拡大表示する」それだけのことではあるのだが、
教材提示装置(書画カメラ)と同じような効果が得られている。

このような「写して、拡大表示する」という生きた実践が
継続されているのに、タブレット端末の導入が「でっかいデジカメ」と
揶揄され続けるのか不思議に思えてならない。

そこには、大きな落とし穴が存在すると私は思っている。
これは、デジカメが学校現場普及してきたときと同じ落とし穴である。

撮影した映像データを誰が管理し、整理するのか。
落とし穴は、この点に尽きる。

撮影データをタブレット端末本体に残していたのでは、
データの再利用には繋がらないし、1台のタブレット端末を
何人かで利用する環境では、他の児童が撮った画像データは、
児童のモチベーションの低下にしか繋がらない。
この状態を放っておくと、タブレット端末は、
使われずほこりをかぶることになりかねない。

デジカメの導入時を思い返してみると、こまめなデータの管理を
している学校は、スムーズに活用されている。
利用方法にもさまざまな工夫をされている。

デジタルだけではない、人が介在することによるアナログ的な要素が
重要であるという端的な例だと思っている。
この反省を生かすなら、タブレット端末の導入時に、クラウドやNAS、
アプリなどをいかにうまく活用して、人的な労力を少なくし、
データ管理をするようなシステム設計を図れることが求められている。

もちろん、タブレット端末の導入時には通信環境の問題など、
考慮しなければいけないことは、いくつもある。
一方、前述のことを意識したタブレット端末の導入計画がなされただけで、
現場での使用感は劇的に向上し「でっかいデジカメ」などと、
揶揄されずに済むものと確信している。

次回は「でっかいデジカメ」本来の良さを生かした、
活用に関してお話しすることにしたい。

尾島先生

倉敷市教育委員会倉敷情報学習センター

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