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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2016.09.09

でっかいデジカメ(2)

前回は「でっかいデジカメ」活用の前提として、
撮影データの保存のあり方について述べさせてもらった。

データ保存の運用体制は、文部科学省も気付いていて
今後のタブレット端末の活用、もっと広く言うなら情報端末の活用を
推進していく中で、一つの課題として提示している。
タブレット端末を導入する際には、ぜひとも一考していただきたい課題である。

さて、今回は「でっかいデジカメ その(2)」ということで、
タブレット端末を活用した協働学習のお話をしてみたい。

タブレット端末とデジカメはどこが違うのか。
一言で言うなら、タブレット端末は「覗き込める」ということに尽きる。
撮影するにしても、再生するにしても、撮影者の両側にいる子供たちは、
画面を覗き込むことができるのである。
「覗き込む」という表現は芳しいものではないが、
これが重要な要素だと思っている。

家庭科の学習で調理を行うことになった。
学習の到達点は「調理法のレシピを、4つ切りの画用紙1枚に、
写真を使って手書きでまとめ、隣のクラスとパネル発表を行う」
というものに設定した。調理前から子供たちは、
どんな調理手順の画像を撮影しようかとグループで話し合い、
撮影場面を決定していった。
材料を並べた場面、材料を切っている場面などである。

いざ調理が始まると、撮影するときに、
タブレット端末の画面を覗き込む子供たちの姿が、そこにはあった。
「アップした方がいいんじゃない?」、「もっと上の方から撮った方が、
わかりやすいよ」「この写真、使える!」など、
自然発生的にあちらこちらで、賞賛やアドバイスが行われていた。

自分たちが使用しなければならない写真なので、
おろそかにできないという思いからだとは思ったのだが、
デジカメを使った実践授業では、なかなかこういう光景には、
お目にかかれなかった。

より良いものに練り上げていこうとする子供たちの思いと、
「でっかいデジカメ」の機能がうまく融合したのだと思った。
「でっかいデジカメ」がコミュニケーションの中心にあるツールとして
うまく機能したのである。

タブレット端末には、画像だけでなくコミュニケーションツール
としての機能が満載されている。良い意味でも悪い意味でも、
世間の注目を浴びているSNSは、もっともたるものである。

人間の中には、「自分を知って欲しい、そのことに反応して欲しい」
という欲求がある。その気持ちに上手く寄り添って、
広がっていったのがSNSだと思っている。子供たちも同じ思いを抱いている。
タブレット端末のこの機能を教育の場でも活用しない手はない。

家庭科の5年生の「ナップサック作りの学習」が終わったときに、
家庭で学級のSNSを利用して、感想の情報交換を行った。
最初は「上手くできて良かったです」など、よくある感想に終始したが、
ある男の子の「うまくいかないときに、○○さん(女の子)に
手伝ってもらって、クリアすることができて感謝しています」
という書き込みがタイムラインに並んだら、
「いや、実はぼくも△△さんにアドバイスをもらいました」、
「俺も」などの書き込みが続いた。
感謝された女の子からは「たいしたことないよ、がんばったからだよ」
という返信があり、大いに盛り上がっていた。

どのようにタブレット端末を使えば教育的な効果が望めるのかは、
定かではないが、タブレットを教育活動で使うことでの、
確かな手応えを感じた瞬間であった。

「でっかいデジカメ」を「でっかいデジカメ」で終わらさずに、
次の段階に進んでいくためには、情報交換ツールとしての
タブレット端末を、いかに上手に活用していけるかが、
ポイントになりそうな気がしてならない。

尾島先生

倉敷市教育委員会倉敷情報学習センター

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