2016.10.14
校務の情報化と校長のマネジメント力(1)
社会の情報化やグローバル化などが進展する中で、
優れた教育実践を積んできた多くの教員が定年を迎えると同時に、
若い教員が教壇に立ち、子供たちのより良い成長を願って、
悉皆の研修やOJTなどを通して、日々研鑽に励んでいます。
そのような中で、これからの社会を生きる子供たちに
必要な資質・能力を育むために、ICTを積極的に活用した学校の
実践事例も報告されています。
京都市立学校では、1980年代当時も似通った状況がありました。
世代交代が進む中で若い教員が中心となり、学習指導や校務の処理に
コンピューターが有効であるという試行錯誤の実践報告を携えて、
教室にICT環境の導入を熱望していたように思います。
このような思いが結実した学校の多くは、
校長のリーダーシップやマネジメント力がありました。
当時も今も、これなしでICTをはじめ、物的・人的な教育環境の整備、
充実を求めても、教育委員会や行財政局の理解と支援を得ることは
容易ではありません。
立場を換えて言えば、校務の情報化を推進するには、計画的なICT環境の
整備と並行して、次代を担う管理職のマネジメント力の向上を支援する
体制が必要であると思います。
今から20年前(京都市では全市立学校へのコンピューター導入が完了)、
当時、情報教育センターの指導主事をしていた頃に訪れた小学校
でのことです。ICT機器が導入される以前から、校長が情報セキュリティや
教職員間の情報共有に対する意識、関心が高く、ちょっとした工夫と
働きかけによって、学校のチーム力が高まっていた事例です。
職員室に入って、すぐ横にあるパーティションの前に、
教室ネームプレート付きの手作りのケース
(学年別の配色や配置に至るまで視認しやすい工夫がされた)が、
各教室分、整然と並んで設置されていました。
それを見れば、児童への配布物忘れや教室使用状況などの把握を
管理職だけでなく、教職員の誰もが容易に確認(情報の共有)
することができました。
未配布物に気付けば、教職員がお互いにフォローし、
コミュニケーションを深め、行動につなげる(情報の活用)ための
『仕掛け』でした。
また、教職員には、机上の整理整頓は見た目ではなく、
セキュリティの面からも重要であること、児童や教職員以外の者には、
勝手に職員室の中までは入らないルール(言葉のキャッチボール)も
決められていました。
校長のリーダーシップが教職員の言動や児童の姿を通して
伝わってきました。
今では校長のマネジメント力のもと、グループウェアを使って
職朝や会議の回数を減らすことで、子供たちと向き合う時間が
増えてきたという事例が報告されるようになってきました。
手作りのケースでなくてもICTを有効に活用し、
子供たちの「学び」はもとより、教員の授業改善や児童理解、
学級経営力などの向上を目指した、新たな『仕掛け』を期待しています。
新田先生
京都市教育委員会 学校指導課