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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2017.01.27

学校ICT環境整備【行政の立場】~ 手立てと整備仕様へのこだわり ~(前編) 

児童・生徒や教員にとって、使いやすく、かつ管理しやすい
ICT環境整備が何よりも大切なのは言うまでもない。
過去に整備してきた「校務用ノートPC整備」、
「児童・生徒用タブレット端末整備」、「中学校の電子黒板等整備」について、
どのような手立てやこだわりを持って仕様としたかを2回にわたってお伝えしたい。

■ 校務用ノートパソコン2,550台の全面更新(平成26年度整備)
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平成21年度に校務用ノートパソコンを整備した際、国の補助金の制約もあり、
端末の性能を含めてさまざまな課題を抱えたままの仕様となっていた。
そこで、次期更新に向けて平成25年度秋に「学校ICT環境整備検討委員会」を
発足させ、管理職をはじめ学校CIO補佐などから徹底的にヒアリングした。

結果、端末のスペックは予算ギリギリで構築できる上位モデルとし、
以前はなかったテンキー付きの端末にするなど、細部にわたって仕様を詰めていった。
また、本市では教員ごとにインターネット系と個人情報系の
二つのアカウントを持たせてセキュリティを確保しているが、
その切り替えが遅いことに課題があった。

この課題に対しては、簡易に切り替えできるスクリプトを作成して
解決してきた。さらに、本庁に設置する校務用サーバーは仮想化、冗長化し、
停止しないシステムを構築した。

当時の最先端ICT技術を最大限に生かすことにこだわってきた。
幸い、予算査定時には、Windows XP の保守切れを理由にできたため、
理解が得られやすかったという追い風もあったと感じている。

■ 児童・生徒用タブレット端末4,800台の整備(平成27年度整備)
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「愛着と使い勝手」+「運用負担の軽減」の同時達成。
これを経費を掛けずに実現するにはどうしたら良いものか、
一番頭をひねったものである。
結果、以下のような工夫を思い付き、仕様書に落とし込んだ。

(1)愛着の持てるデスクトップ
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タブレット端末のデスクトップ画面を、西宮市のシンボル「甲山」の
空撮画像を背景に、本市オリジナルキャラクターの
「みやたん みにゃっこ」を配置した。
児童・生徒が一目見て「かわいい」と思わせることで、
自然とタブレット端末を大切に扱うことを狙ったものである。
何事も「つかみ」が大切である。

(2)操作系アイコンの配置
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シャットダウンやサインアウトなどの機能を持ったアイコンを、
デスクトップの右隅に設置した。これでタブレット端末の操作が苦手で
老眼気味(!?)の教員のストレスも、かなり減少することができた。

(3)本市ゆかりのアイコンシール
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西宮えびす、甲子園球場、お酒、ヨットハーバー、夙川の桜など、
本市にゆかりあるコンテンツシールを各校10台ずつの
グループセットで作成した。
それを、すべてのタブレット端末本体とクレードルの両方に貼り付けた。
これにより、授業後の片付けの際、教師が注意しなくとも、
子供たちは自然と絵合わせの感覚でタブレット端末を元の
クレードルに差し込んでいく。無味乾燥な英数字の管理シールだけでは、
ICT機器への愛着は生まれてこないと思われる。
自然と機器を大切にするような仕掛けが必要なのである。

(4)バッテリー対策
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一番頭を悩ませたことだった。5年リースなのでバッテリー寿命が読めない。
そこで、「フル充電してから画面を点灯し続けて、
3時間以内に電源が落ちたときはタブレット端末を交換すること」という、
メーカーにとっては大変リスキーな仕様とした。

(5)ハード仕様へのこだわり
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タブレット端末4,800台すべてを充電クレードル付きとした。
平成25年度からの学校ICTモデル校での実証研究で、
電源プラグの抜き差しでの充電がいかに面倒であるかが
分かっていたからである。
また、主に小学校の普通教室で、すでに設置されていた
大型デジタルテレビに対して、画像転送機能付き無線AP
(アクセスポイント)を1,415台設置した。
これにより、教室内で教員が立ち位置を束縛されずに、
タブレット端末の画面を転送しながら授業ができる環境を
実現することができた。

これらはどの自治体でも応用可能である。
「地元に密着した一工夫」で、子供たちが自然と機器に対する愛着を
持つことで大切に扱い、それが教員の運用負担軽減や保守費節減にも
つながるものと考えている。
ぜひ、これから整備しようとする自治体でも検討いただきたい内容である。

なお、この時の予算査定では、Windows XP のサポート終了ともからめて、
これからの子供たちに求められる情報活用能力の育成に主眼を置いて、
本市の進むべき方向性を説明した。その指導をする際に必要なICT環境
であることを力説して、理解を得ることができたものである。

<次回は、中学校での電子黒板整備についてです>

星川先生

兵庫県西宮市立深津中学校 校長

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