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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2017.05.26

教育の情報化の地域格差について(1)

 今回、教育の情報化について感じている部分をまとめる機会を頂いたので、
地方から見たという視点で標記のテーマでまとめてみました。

 まず、教育の情報化の地域格差について述べる前に、私が勤務している地域の
教育の情報化のスタートについて振り返ってみます。私の教育の情報化は1995年
頃からのスタートになります。これは、県内では早い方に属すると思います。
この年に山間地の小規模校に勤務しました。今は廃校になりましたが、当時全校
児童20名弱の学校でした。もちろん、全ての学級が複式(複数の学年の児童が
一緒に学習する)学級でした。小規模校に勤務した経験のある方は思い浮かぶ
と思いますが、学校という組織はその規模の大小に関わらず、教科の主任
等々や地域の教育研究会の所属等、ほぼ同様の対応をする必要があります。
児童数が少ないということは教員数も少ないわけで、教員一人分の役割が
多くなります。そこで、今でいうところの職務の効率化に向けてどうにかする
必要が出てきました。また、児童数の関係で、次年度はさらに教員数が減る
ということが確実になっていました。

 その時の同僚との出会いが、大きなターニングポイントになりました。
この同僚A先生はさまざまな経歴を経て教職に就いた方で、柔軟な発想ができる
方でした。また、工業高等専門学校卒業という経歴もお持ちでパソコンにも
堪能でした。折しも、DOS/V(ドスブイ)機という規格のパソコンが出回り、
二人でパソコンの組み立てから取り組みました。そして、余った部品で
組み立てた1台にデータを集積し、データを集積するパソコンをプリント
サーバーにし、印刷も一元化しました。プリンターを複数台買うお金が
なかったので、知恵を絞った結果行きついたという部分もありますが。
LANケーブルも出来上がったものを買うのではなく、ケーブルと端子だけを
購入して、カシメで端子を付け、校内にLANケーブルを張り巡らしました。
こうして、校務が効率化できてきました。もちろん、費用は二人で
出し合って対応しました。今でいうところのBYODでしょうか。

 PCを校務で使う中で、これは、児童の教育活動にも生かせないかと
考えるようになりました。そんな時、官公庁でPCを入れ替えすると情報
を頂き、借りることができました。PCを児童に触れさせると、
目を輝かせて取り組む姿が見られました。その姿に、これからは目の前の
児童もPCを使うことが当たり前になると確信しました。

 児童の学習でまずPCを導入したのが国語です。作文指導で、
せっかく書いた文章を校正する必要が生じます。指導者は、朱を入れて児童に
返却しますが、児童は、清書をもう一度書くという作業が待っています。
ここでパソコンの登場です。ワープロソフトを使うことで、児童も必要な
部分だけを直せば良いし、少ないながらも友達同士で互いに意見を出し合う
ことができ、書き直しに対する抵抗が少なくなりました。
また、以前は調べたことを発表する際、模造紙にマジックなどで書き、
それを発表し合っていましたが、プレゼンテーションソフトを使うことで、
途中でも意見を出し合って訂正ができるようになりました。
これも、児童にとってやる気が出ることでした。残念ながらプロジェクターは
高価で買えませんでしたので、人数が少ない利点を生かして、互いのパソコン
の画面をのぞきながらの話し合いでした。

 ちょうどその頃、インターネットが注目されるようになりました。
たまたま友人がプロバイダー事業を開始し、小学生のためならばということで、
無料で提供してくれることになりました。しかし、電話回線は個人で引くと
経費が…という問題が生じました。幸い管理職の理解が得られたので、
自分たちで電柱を立て、校庭の向かい側にあった校長住宅の回線から校舎まで
引き込むことに成功しました。そして、校内のPCでインターネットに接続
できるようになりました。

 こうなると、児童の学習も変化してきます。その頃は今ほどたくさんの情報が
行き交ってはいませんでしたが、自分たちが情報を得るだけでなく、情報を発信
する側にもなれることが分かってきました。そこで、A先生と相談して
ホームページ作成用のソフトを購入しました。

 ところが、文章だけでは表現したいことが十分伝わらないため、映像も必要に
なってきました。映像を使うためにはデジカメが必要になり、そのデータを
入れるために、今はなくなってしまいましたがZipドライブを購入しました。
ところがその頃の回線速度では映像データは大き過ぎて、閲覧までに時間が
かかることも分かってきました。こうなると、写真を加工するソフトや技術が
必要になります。当時(おそらく現在も)一番人気の高かった映像加工ソフトは
10万円代後半でした。さすがにポケットマネーでは…。その時A先生が有力な
情報をゲットしてこられました。「日本語版は高額ですが、英語のオリジナルは
そこまで高額ではないそうです。それを買って、日本語の解説書を書店で購入
すれば何とかなるのでは?」挑戦開始です。たまたま、高校時代の友人がアメリカに
勤務しておりましたので、国際電話です。本人が出てくれると話が通じるのですが、
秘書の声が電話口から流れた瞬間電話を切って、別の機会に。というような
笑い話のような経過を経て無事購入できました。もちろん、メールの有効性も
結果として分かってきました。

岩田先生

島根県安来市立島田小学校 教頭
全国地域情報化推進協会(APPLIC)教育WGメンバー
島根県メディア教育研究会 事務局長

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