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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2017.06.23

教育の情報化の地域格差について(3)

 前回は、学習や校務の中でどのように情報化が活用していったかを
振り返りましたが、今回は3回目の結びとして、教育の情報化の地域格差の要因
に関して触れたいと思います。 
 
 現在、文部科学省のホームページで公開されているデータで平均値より
下位の市町村などは、本県や本市が抱える課題と同様な部分が
あるかもしれないと思い、最後にその部分について私なりにまとめてみます。

 その後、転勤で市内の児童数200名弱の学校に勤務しました。この時、
総務省や文科省が共同で実施した補助事業の該当となり、大型のディスプレイや
テレビ会議システム、専用の光ケーブルが設置されました。併せて、
市内のパソコン教室の整備にも係るようになりました。教育委員会の担当の方と
頻繁に連絡をとり、当時としては最新の環境で教育に取り組めるようになりました。
さらに、メールサーバー管理も事業エリアの各校ごとに設定でき、さまざまな
ノウハウを得ることができました。

 その中でもテレビ会議システムはその後の教育に大いに役立つだろうと
考えました。しかし、実際の運用でさまざまな問題点も分かってきました。
映像と音声を伝えるということの難しさです。当時としては、かなり先進的な
実証実験でしたが、その頃の回線では必要な情報量の送信には不十分だということが
よく分かりました。
また、2つのテレビ会議の方法を試すことができましたが、1つの方法はほとんど
使えないということも分かりました。県内の指定校が一堂に会しての情報交換会も
ありましたが、学校ごとの取り組みの差があまりにも大きく、この事業を実施
するまでの学校ごとのベースをある程度耕しておかないと、指定が当たり機器が
整っても効果が得にくいということも痛感しました。

 一方、前任校で取り組んできたホームページという形での情報のデータベース
化は非常に有用で、学校専用のデジタル教科書的な活用ができ、県内の社会科の
授業公開を実施した際には、各学年の授業で使われました。さらに、当該年度に
実施したことや児童の質問、その解答などを掲載すると、次年度の学年の児童は
それをベースに学習を進めることができ、年を追うごとにデータベースとして
厚みを増し、児童の学習も深まりました。併せて、見学先の方からは、
「毎年同じような質問が繰り返されていたが、質問の質が変化してきた」と
言われるようになってきました。

 また、インターネットが生活に与える影響も大きくなってきたことで、
児童の学習でもその部分についてしっかり押さえる必要が出てきました。そこで、
上記のシステムなどを活用し、校内で疑似体験ができるチャットや掲示板を
作成しました。保護者も言葉は聞いたことがあるが…?という状態だったので、
参観日などを利用して親子で学習する機会を意図的に設定しました。

 テーマを決め、あらかじめ一部の保護者に学習の趣旨を伝えてチャットに
取り組むと、児童も熱中して、あっという間の45分の授業になることが
しばしばでした。このような取り組みから、保護者にもインターネットの有用性と
危険性を認識してもらえました。さらには、児童もキータッチの速度が
劇的に向上しました。

 結局、現場での教育デザインが不十分だと、機器が整っても大きな教育効果は
期待できないということが体験的に学べました。また、インターネットについての
学習が今後大きなテーマになることが感じられました。

 次は、管理職として日本海に浮かぶ離島の海士町に転勤しました。ここでは、
情報教育環境が不十分でしたが、補助金が有効に活用され、教育委員会の担当者と
十分に協議を重ね、現場のニーズにあった環境が整いました。
また、運用についても現場の声に耳を傾けていただきました。2年間という短い期間
でしたが、児童用、教員用ともに今までの経験を十分注ぎ込むことができました。

 今では、教育に力を注ぐ島として全国的に名をはせ、さらに最新の教育機器が
整備され、日々進化しています。これは、いわゆる「よそもの」であろうと、
有用な提案は積極的に取り入れていくという行政の懐の深さにあるのではないかと
思います。併せて、教育に注がれる「熱い思い」にも裏打ちされていたと思います。

 現在は、教職員の研究組織である県教育研究会のメディア部の運営にも
携わっています。県外の最新情報を現場の先生方にお届けし、日々の教育に役立てて
ほしいと願っています。併せて、最初に述べた格差の解消に向けて何が重要かを
吟味しています。

 教育の情報化について格差が広がっていると述べましたが、決して
県の内外だけではありません。同じ県内でも市町村によって大きな格差が
生じています。

 なぜそうなったのか?それには、さまざまな原因があると思いますが、
ここ20年ほどの県内の様子から考えると、大まかに言えば、「現場は何をしたいかの
ビジョンを持ち、他県の先進事例を積極的に研究してきたのか」
「必要に応じて他県の研究会や視察で課題を確認してきたのか」
「行政は海士町のように現場の声に耳を傾け、限られた予算の中でも『熱い思い』で
サポート体制を整えることができていたのか」になると思います。

 ということは、上記の課題を解決していくことで教育の情報化の格差は改善すると
思います。本県は、平成31年度は教育工学全国大会の会場として、さらに平成35年度は
放送教育中国大会の会場としても決まっています。これを一つのチャンスと捉え、
市町村毎に課題を洗い出して取り組んでいけば、格差は少しずつでも縮んでくるのでは
ないかと思います。

 後発の利という言葉もあります。同一規模の他県の成功例や失敗例を積極的に学べば、
有効な活動がなされます。これからの島根の子供たちのために、そしてそれを支える
若い先生方のために、島根県メディア教育研究会の一員として今後もできることを
探っていきたいと考えています。

岩田先生

島根県安来市立島田小学校 教頭
全国地域情報化推進協会(APPLIC)教育WGメンバー
島根県メディア教育研究会 事務局長

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