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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2017.06.09

教育の情報化の地域格差について(2)

 前回、地域の教育の情報化に関する始まりを振り返りましたが、今回は、
その始まりから次に学習や校務の中でどのように活用していったかを
振り返りたいと思います。

 情報発信は、児童の学習意欲向上に大きな影響を与えました。今までは、
プレゼンテーションソフトで地域の方や異なるクラスの児童に発表して
いましたが、これからは世界中の人が相手です。今まで以上に正確に、
間違った情報を発信しないようにしなければなりません。
3年生の総合的な学習の時間に、山菜をテーマにした学習に取り組んだ際は、
山菜を採取し、図鑑で調べ、地域の方に確認し、調理法を教えてもらい、
調理し、それをホームページにまとめる学習をしました。高学年は、
地域の産業をテーマに調べ学習をし、ホームページに公開しました。
さすがに写真の加工とアップロードは教員サイドで担当しましたが、
このような学習を通じて、児童は情報発信のノウハウやスキルを身に付けて
いきました。また、メールで質問が届いたりすると、さらに意欲が向上しました。

 こうした児童の取り組みに対して、保護者も協力的で、児童用のPC代金を
負担するというご家庭もあり、3年目には全校児童が各自のパソコンを
教室に置いて、必要な時には道具としてパソコンを使うようになってきました。
中には、家庭用にもと2台ご注文いただき、手数料はもちろん無しで、
部品代金のみで日曜大工でパソコンを組み立てました。
学校の作業の続きを家庭で取り組む児童も現れ、宿題をしてきたと
フロッピーを出された時には、児童の進化のスピードに驚きました。

 学校での取り組みを自主研究会という形で地域にも紹介し、たくさんの熱心な
先生方が来校され、活発な議論ができるようになってきました。当時、
この学校は島根大学教育学部の僻地複式授業の実習校でもありましたので、
毎年大学生が数日間泊まり込みで授業体験をしておられました。
赴任2年目あたりから、大学生よりも児童のタイピングスピードが速くなり、
休憩時間に大学生のレポートを口述筆記している高学年の児童がいるほどでした。

 平成の大合併前で行政も小回りが利いたということもありますが、
勤務校でのさまざまな取り組みに対して行政からも支援を頂けるように
なってきました。具体的には、町内の各校に数台のPCを教育用に配備し、
ホームページ作成用のソフトなどは本校で実践しているものが購入
配布されました。

 ホームページの効果として、ホームページを閲覧された東京のテレビ局から
番組制作の依頼があったこともあります。製作スタッフやテレビで見たことのある
タレントさんが学校を訪れ数日間にわたって収録作業がされました。
後日、出来上がった番組を見た児童は、テレビ番組は製作者の意図をもって
作られているという事実が実体験として学習できました。

 校務の方も計算ソフトを使って効率化したり、データベースソフトを使った
通知表も作ったりました。学期ごとに体育の活動の様子や図工や家庭科の
作品の写真を入れ、学習の様子なども記入しました。児童数が少なかったから
できたということもあるかもしれませんが、一人当たり毎学期1200字程度は
記入していました。これも、学期末に記入するのではなく、学期途中でも、
その都度記入していくわけで、指導要録とは連携していませんでしたが、
現在、全国地域情報化推進協会(APPLIC)の推奨マークで認定されている
校務支援ソフトと考え方は同様の取り組みでした。

 20年前から上記の取り組みをしていたわけですので、今のような教育の情報化の
格差が生じるはずは無いのですが、現実は大きく異なりました。文部科学省の
ホームページで公開されているデータを見ますと、本県、本市
(平成の大合併により2004年に2町1市が合併しました)は全国平均と比べて
さまざまな分野で大きな差がついています。20年前に全校一人1台のパソコンを
配備し、ワープロソフト、計算ソフト、プレゼンテーションソフト、
ホームページ作成ソフトを使い、自ら情報発信し、他の地域の方と交流していた
小学生がいたにも関わらずです。

 振り返って考えますと、当時の取り組みが「点」であり、「線」から「面」に
広がらなかったからだと思います。そして、「線」から「面」に広がるためには、
いくつかのファクターが必要だと思うようになりました。

岩田先生

島根県安来市立島田小学校 教頭
全国地域情報化推進協会(APPLIC)教育WGメンバー
島根県メディア教育研究会 事務局長

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