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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2017.07.28

◆連載コラム第2回◆ 情報モラル教育の三層構造アプローチ

 前回のコラムでは、教育の情報化を推進するためには、情報モラル教育を
学校全体で計画的に⾏う必要があると述べた。今回は、私が担当する教員研修会で
紹介している「三層構造アプローチ」(⻑⾕川・尾崎2012)を紹介する。

 「三層構造アプローチ」は、医学を「予防医学」「未病医学」「治療医学」と
3つに分けて考えることにヒントを得たもので、情報モラル教育を
「予防教育・道徳教育」「予兆発⾒時未然防⽌教育」
「事後指導・事後教育(再発防⽌教育)」の三層で考えることで、対策を
講じようとする考え⽅である。
(図参照︓http://www.school-security.jp/ml/Three-layer_structure.png

 情報モラル教育の年間指導計画を⽴て、学校で組織的に情報モラルを
指導することは「予防教育・道徳教育」であり、問題が起きた後の⽣徒指導は
「事後指導・事後教育(再発防⽌教育)」である。これらは多くの学校で
⾏われているものであるが、これに「予兆発⾒時未然防⽌教育」を追加することを
推奨している。

 まずは、ネット利用に関連する問題が発⽣しやすい時期を学年毎に考えると良い。
新学年のスタート時期に起きやすい問題は年度始めに取り上げ、夏休み中に
起きやすい⾏いやすい問題は夏休み前に取り上げるなど、児童・⽣徒の実態に
合わせた年間計画を組むと効果的な指導ができる。授業時間の確保は、
道徳科以外に学級活動の時間や総合的な学習の時間なども利用すると良い。
なお、スマートフォンやタブレットPCの利用状況やサービスが
年々変化しているため、毎年の状況に合わせて、指導計画を変更していくと良い。
さらに、中学校では、一⽇入学等の機会を捉え、入学前に⼩学校での利用状況を
把握しておくと良い。

 「予兆発⾒時未然防⽌教育」は、問題の予兆を掴んだ時に、未然防⽌の
ための教育、指導を⾏うものである。現存する中国最古の医学書「⻩帝内経」に、
「『上⼯不治已病、治未病』(良医はすでに病気になっているものを治さずに、
未病を治す)」という⾔葉がある(今⻄2001)。この考え⽅を教育に当てはめれば、
「良い教師はすでに問題を起こした子どもに対応するのではなく、
問題を起こさないように子どもを育てる」と⾔える。正しい判断⾏動が
できるように指導するとともに、特定健康審査(いわゆるメタボ検診)で
病気発⽣の兆候を捉え、病気になる前に状況を改善するための参考とするように、
児童・⽣徒の様子から、問題発⽣の可能性を捉えて指導することができれば、
問題を未然に防ぐことができる。
具体的には、児童・⽣徒の⽇頃の会話から気になる様子をつかんだり、
アンケート調査や教育委員会等が⾏っているネットパトロールの報告データなどを
活用したりすることなどが考えられる。これも、関連した児童・⽣徒のみでなく、
全体に指導すると良い。

 以上、三層構造情報モラル教育アプローチを概説した。より詳しくは、
「札幌市⽴平岡中学校開校30周年記念研究紀要
〜9年間の校内研究と情報モラル教育のまとめ〜
(札幌市⽴平岡中学校のWebサイトhttp://www.hiraoka-j.sapporo-c.ed.jp/
からダウンロード可能)」のP78からP82を参照されたい。

<引用⽂献>
⻑⾕川元洋・尾崎廉(2012),三層構造情報モラル教育アプローチへの
教師の評価, ⽇本教育⼯学会第28回全国⼤会講演論⽂集,pp.847-848
今⻄⼆郎編(2001),未病の医学,医⻭薬出版株式会社
札幌市⽴平岡中学校(2014) 札幌市⽴平岡中学校開校30周年記念研究紀要
〜9年間の校内研究と情報モラル教育のまとめ〜,
http://www.hiraoka-j.sapporo-c.ed.jp/2014/info/joho/jn/30thhjsjn.pdf

長谷川先生

金城学院大学 国際情報学部国際情報学科
メディアスタディーズコース 教授

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