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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

ISEN委員長 山西先生のコラム

2018.01.12

教育の情報化のさらなる進化に期待

 明けましておめでとうございます。
ICTの教育利用が進む中、一人1台タブレット端末の環境も広がってきています。
ようやく、コンピューターが高価で貴重な特別な道具ではなく、ノートや鉛筆の
ごとく、児童・生徒の学習を支える基本的な道具として活用される時代になって
きた感があります。ISENでもこのような時代にあって、その利活用をどのように
進めればいいか、維持管理のための情報セキュリティはどのようにすべきか、
皆さんとともに考えて行きたく思います。どうか今年もよろしくお願いいたします。

 さて、ISENでは、昨年11月末、恒例のICT利活用に関する先進的海外視察を
実施し、オーストラリア、クイーンズランド州へ訪問調査してきました。
今回は前回に引き続き2度目の訪問です。オーストラリアでは、教科の内容、
時代に対応した資質としての汎用的能力、地域に特化した学習内容の3つの軸から
形成される3次元カリキュラムに基づき、小学校から中・高等学校の学習内容が
決められています。教科の学習の中で、教科内容はもとより、言語的能力や
数理的能力、ICT活用能力や批判的・創造的思考、自立や社会性、異文化理解や
倫理教育など7つの能力育成が求められています。州教育委員会の指導のもと、
各学校では、上記のようなカリキュラム・ポリシーに基づき、日々の授業が
実施されているのです。

 日本において、2020年から実施される学習指導要領にみられる主体的・対話的で
深い学びにつながるアクティブ・ラーニングも実施されています。
どの学校でも目にする共通のスローガンは、「I Do, We Do, You Do」。
まずは、自分でしっかり学習。次に、チームでの課題解決。
最後は、何を学んだかをお互いに発表し確認する。
このそれぞれのフェーズで当たり前のようにタブレット端末が活用されているのは
言うまでもありません。しかしながら、訪問したAshmore公立学校では、
教師の話をよく聞く、よく見るなどの学習態度の指導、ノートの取り方、
実験のまとめ方などのきめ細かい指導、チームでの活動の方法やルールを
発達段階に応じて指導することが最も重要とのこと。そこで習得した態度や
スキルがあることで、タブレット端末をノートや鉛筆のごとく活用できる
とのことでした。理科や算数の授業でも、話し合いで役割分担を決め、
それぞれの役割に応じた活動を通して、チームでの協調問題解決活動に
力を入れている姿が見て取れました。また、これらの学習は、学習情報発信
システムを通して、児童・生徒自らが学んだ成果を発信しています。
地域や家庭にあって、ホームページでの公的な学校情報のみならず、
学校でどんな内容を学習しているのか、どんな活動をしているのか、
児童・生徒による日々の活動報告は、保護者にとっては学校理解や評価に、
児童・生徒にとっても学習意欲の向上や学習の振り返りに素晴らしい
教育効果があるようです。たやすく情報発信できるこのSeeSawシステムの
整備で学校と地域・家庭がいつでもつながっている姿は、我が国でも早く
取り入れたいものです。

 最後に、クイーンズランド州教育省での教育の情報化で、特筆すべきは、
何と言っても統合型校務管理システム One School です。
クイーンズランド全州のK-12の学校1,200校の児童・生徒、教職員、保護者が
インターネットを通して、情報管理、情報共有、情報公開ができる
校務管理システムです。もともとオーストラリアはその広さ故に、
e-Learning やテレビ会議システムなど遠隔教育手段が最も整備されている国です。
One school と呼ばれるこの校務管理システムは、5年で約100億円の予算が
投じられて開発され、教育委員会が管理運営を行っています。児童・生徒の
成績はもちろん、学習や行動履歴などが細かく管理され、本人や保護者が
いつでも閲覧可能になっています。教師向けにはカリキュラム・マネジメントや
教材、学習評価など、教師の日々の授業支援のためのコンテンツが豊富に
準備されています。

 上述のアクティブ・ラーニングに係る授業についても、多くの教師は
このシステムを活用し、指導に当たっているとのことです。
授業支援システムの活用はもとより、児童・生徒の学習や行動履歴の入力も
教師の仕事です。でも、どの教師にも負担感はないとのこと。日常的な
支援システムの活用が教師のリテラシーを高めるとともに、教師や児童・生徒、
保護者にとって使いやすいシステムであること、その活用が効率的で
役に立つという実感が共有されていることが重要です。我が国の教育の情報化で、
一人1台タブレット端末の広がりと同時に、活用の利便性や効果を皆が共有できる
システムを早く構築したいものです。

山西先生

富山大学 名誉教授。日本教育工学会(JSET)会長。日本教育工学協会(JAET)評議員会議長。教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)委員長。インターネットやコンピューターなどの情報通信技術を用いた 教育方法や学習環境の開発に関して、学校教育から生涯学習まで幅広く研究している。専門は、教育工学、情報教育。

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