小学校でプログラミング教育をどのように進めるか実践例2 ～「MESH」でつながる親子の会話～

2018.04.13

　今回は、授業時間以外で、本校で実践したプログラミング教育の実践例を
紹介したいと思います。前回も述べたように、プログラミング教育において、
外部機関連携できることにより、質の高い実践へとつながると考えています。
小学校学習指導要領解説に、プログラミング教育を進めるため、外部人材の
活用について記述されていることは前回も述べたとおりです。
　本校でプログラミング教育を進める上で、重要と考えていることは次の三つです。
　①　コンピュータ画面のみで完結するプログラミング教育にならないこと。
　②　プログラミングを行って、実際に制御できる物があること。
　　　（例　ロボット等）
　③　プログラミングを行って、多くの意見交換や友達同士でのふれあう活動が
　　　あること。
　今回は、以上の3点の要素を含み、比較的短時間で体験できるワークショップを
　山口市教育委員会社会教育課が中心となり、本校で実施した実践例を
　紹介したいと思います。

　ワークショップのテーマは「日常の生活で役に立つ物を作ろう」で、
日頃の生活で少し不便で、あったらいい物を作るためにプログラミングを行い、
実際に使ってみる体験を行いました。
　使用した機器は、ソニーが開発した「MESH」（ソニーの登録商標以下省略）です。
参加対象者は本校の児童とその保護者とし、指導者は地元の大学および
その学生ボランティアで運営を行いました
　ここで、「MESH」の概要について説明したいと思います。
「MESH」はさまざまな機能を持ったブロックのような形状をした電子タグで、
それをMESHアプリ上でつなげることにより制御する物で、子供たちにも
直感的に理解できる良さがあります。
　メッシュの電子タグには、ボタンを押すと反応する「ボタンタグ」、
いろいろな色に光る「LEDタグ」、動きを検知する「動きタグ」、
人の動きを感知する「Motionタグ」、明るさの変化を感知する「明るさタグ」、
温度や湿度を検知する「温度・湿度タグ」などが準備されています。
　また、ソフトウェアで制御する物としては、写真を撮る「カメラタグ」、
音を鳴らす「スピーカータグ」、二つの信号を同時に受け取ったときに
出力先へ信号を送る機能の「Andタグ」、信号を受け取った時の回数を数える
「カウンタータグ」、一定の時間を待つ「タイマータグ」など、
多くの機能が準備され、子供たちはその組み合わせを考え、プログラミングを
体験していきました。

　子供たちは保護者と一緒に、準備されたタグとさまざまな日用品を手に
取りながら、どのように組み合わせて日常生活で役立つ物を作るかの
コンセプトを考え、それに沿ったプログラミングを行っていました。
　子供たちが作った物は、動きセンサーを使い、学校に必要な物を取り忘れると
光や音で知らせる「忘れ物をしない道具」や、歯磨きを規定回数以上しっかりと
やらないと音の出る「正しい歯磨きを教える道具」、音タグで音を検知し、
音を鳴らすスピーカータグを利用して「落ち込んだときには拍手する道具」を
作ったグループもいました。

　今回のプログラミング体験で、プログラムの難しさや、おもしろさを
体験しつつ、自分たちの生活をより良くするにはどうしたら良いかを考え、
その中での自然と親子のコミュニケーションが生まれていました。
　また、プログラミングを行っているときには、他のグループとの
意見交換をしたり、どのように改善すれば良いかなどのコミュニケーションを
積極的に取ったりする姿が印象的でした。
　今回の実践は学校外での実践でしたが、「MESH」の手軽さと、
プログラムアプリのシンプルさがとてもわかりやすく、価格的な面もありますが、
小学校におけるプログラミング教育でも十分活用できると感じました。

　先日、文部科学省から「小学校プログラミング教育の手引」が発表されました。
　この手引なども参考にしながら、誰でも気軽に使うことができ、
現場の教員の力量に左右されない教材作成をぜひお願いしたいと思います。

松田先生

略歴
　　山口県生まれ
　　県内小学校勤務
　　山口県教育研修所（現　やまぐち総合教育支援センター）　情報教育部　研究指導主事
　　柳井市教育委員会　指導主事
　　周防大島町教育委員会　指導主事
　　山口市立上郷小学校長
　　山口県教育委員会　義務教育課　主幹
　　山口市教育員会　学校教育課長
　　山口市立白石小学校長（タブレット実証実験校）
　　山口市立大殿小学校長（総務省　若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業実施）