2018.05.25
情報セキュリティからみた学校の不思議(3)
○ 学校の不思議
情報セキュリティに関する有識者会議に参加していたとき、学校関係者では
ない方から興味深い発言がありました。その内容は、「企業などでの不祥事は、
その企業のトップが対応する。公立学校での不祥事は、教育長が対応している。
公立学校のトップは首長ではないのか。なぜ首長が対応しないのか」という
ものです。年末調整の書類などを思い出すと、自分も教育長からではなく、
首長から給与をもらっています。不祥事に対する記者会見の場面で、
首長が対応していることは少ないです。普通と考えられていることが
普通ではないこともあると実感した発言でした。
情報セキュリティに配慮すると、これまで普通にできたことが
できなくなることがあります。個人情報保護に関連する事例ですが、
自分が初任者の頃、先生には生徒名簿が2冊分けられていました。1冊は学校用、
1冊は緊急時の連絡などのために自宅に持ち帰るのです。最近では、生徒名簿を
作成していない学校もあるでしょう。作成しなくなった当初、
先生から「面倒だ」「やりにくくなった」という声を聞くことがありました。
今では、緊急時の連絡を、専用のメール配信システムから行っている学校も
あります。すべての家庭がメールで連絡できるわけではありませんので、
電話やファクシミリなどの方法を併用している場合もあります。
「学校の常識は世間の非常識」と、学校外では通用しないと指摘されることが
普通に行われているという学校の不思議があります。
端的な例は、先生は時間外労働に対する感覚が鈍いです。仕事の費用対効果を
ほとんど考えません。それによって、先生のやる気を高める場合もありますが、
先生の多忙化につながることもあります。今、働き方改革に伴い、先生の仕事の
見直しが行われています。見直すときに、情報セキュリティの観点を
取り入れましょう。先生の仕事の軽減のために、情報セキュリティをないがしろに
することは許されません。逆に、情報セキュリティを確保するために、
先生の多忙化が進むことも回避したいことです。今は、先生の仕事の見直し、
改革を行う絶好の時期です。
加藤先生
静岡県立浜松大平台高等学校 教頭
静岡県総合教育センター指導主事として、情報教育、授業におけるICT活用、
校務におけるICT活用、情報セキュリティ等に関する研修・研究を担当。
その後、静岡県教育委員会事務局教育政策課情報課推進室にて、
成績処理システムを始めとする校務におけるICT活用に関する事業を担当した。