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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2018.06.08

全校体制で情報モラル教育と保護者啓発を

スマートフォン(スマホ)やゲーム機などの携帯情報機器の利用の低年齢化、
長時間使用による依存問題、ネットトラブル、生活習慣の乱れ、
学力・体力低下など、子供や教育への負の影響は計り知れないものがあります。
学校も教育委員会も、この対応の必要性や重要性は十分認識しており、
携帯会社などの専門家をゲストティーチャーとして招いて、子供に指導して
もらったり、学校として系統的・計画的に情報モラル教育を実施したりして
子供たちに情報活用能力を育むことで、インターネットや携帯情報機器を
正しく活用し、問題に対して危機回避できる力をつけようとさまざまな
取り組みをされています。

しかし、これらの携帯情報機器の利用や問題は、学校ではなく、家庭や地域で
起こるのであり、家庭での管理やルール、マナーなど、これらの機器や
インターネットに対する保護者の知識や問題の認識が不可欠です。
しかし、現状は、保護者自らが、SNSで「いいね」ほしさに子供の画像や
個人情報を気軽に投稿したり、乳幼児にスマホに子守をさせたり、
時には保護者間のネットいじめが起こったりしている事例をよく聞きます。
そのため、保護者への啓発や学びが課題であり、多くのPTAや学校が
家庭教育学級や保護者研修会を開いています。
しかし、残念ながら、聞いてもらいたい保護者は、ほとんど参加されず、
問題の改善が見られず、学校としての大きな課題となっています。

このような問題改善を行うために、今一度、学校体制でスマホ・ゲーム機問題の
保護者啓発を真剣に考え、対応していく必要があるのではないでしょうか。
例えば、保護者が多く集まる入学説明会や就学前健康診断で、学校として
大きな教育課題となっていることを説明する。休日参観日に家庭教育学級を
行ったり、学校長からの講話として問題提起したりする。また、授業参観で
情報モラル学習を行い、その後の学級懇談会で授業についてや問題提起となる
動画コンテンツを題材に、グループトークを行う。経験上この問題については、
教師の投げかけがなくてもグループトークは非常に盛り上がります。
保護者自らが問題の気づきや共感をすることで、今後の保護者の共通の課題と
認識してもらう。そのような働きかけをすることで、保護者が問題解決や
子供の健全な学びや育ちに向けて自らの学びの必要性と学校や保護者間の
連携の重要性を認識してもらい問題改善につなげていく。

新学習指導要領においても言語能力や問題発見・解決能力と同様に
情報モラルを含めた情報活用能力が現代的な諸課題に対応して求められる
資質・能力と位置づけられています。
学校としての系統的・計画的な情報モラル教育を行うことはもちろんのこと、
保護者啓発も同様に全校体制で取り組むことを推進していく必要があるのでは
ないでしょうか。

稲葉先生

現在 京都市教育委員会 生涯学習部 統括首席社会教育主事 稲葉弘和

昭和56年より京都市立小学校に勤務,
平成17年より京都市教育委員会情報化推進総合センター指導主事となり
京都市立学校の校内LAN等ICTの整備や教員への情報教育の研修を担当し,
京都市の学校の情報化を推進。
平成20年より京都市立梅小路小学校教頭,校長を歴任し
平成26年より生涯学習部首席社会教育主事となり,
家庭教育支援や「地域とともにある学校づくり」を推進している。
小中学生向けのスマホ学習プログラムや保護者への啓発プログラムを作成し
平成28年より情報モラル教育を全市に展開している。
また,文部科学省委託事業「ICT活用指導力向上研修」プログラムや
「情報化社会の新たな問題を考えるための教材」の作成委員等を歴任し,
教育情報化や情報モラル教育の推進に関わる。

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