2018.07.27

ISENオーストラリア教育現場視察報告（2）

　Hilliard State School（クイーンズランド州立の公立小学校）は、
独自にBYO iPadを実践しています。2014年から段階的に導入を図り、
2016年に児童全員がiPadを所有することとなりました。
BYOD（Bring your own device）のDをiPadに限定しており、
iPadの機種は限定していません。児童・生徒一人当たり年間110A$の補助が
学校にあるとのことで、援助が必要な児童には学校から支給されます。
児童は制服でしたが、援助が必要な児童には制服もその補助の中から
支給されるとのこと。卓越したICT学習環境と先進的な教育方法の実践で、
Apple社から革新的教育プログラム実践校としての認定を受けています。

　授業見学したのは、日本における幼稚園に該当するPrep（準備学年）、
3年生、5年生ですが、すべての教室でiPadおよびさまざまなアプリ、
プログラミングロボットなどを活用した授業が行われており、
アナログツールも効果的に活用されていました。iPadを使用した授業を
行うようになってから、児童の関心・意欲が高まり、結果としてテストの
成績が向上したとのこと。iPadにインストールされたアプリは、
教育効果が高いと思われるアプリケーションを教員が選定したといいます。
本年度は、従来のSTEM教育に”Art”の要素を加えたSTEAM教育を
促進するために、オーストラリア政府から5,000A$の寄付を受け、
Makerspace（問題解決能力を付ける活動を行うための教室）が
整備されていました。各学年の授業では、プログラミング
（iPadを用いないプログラミングも有）はもちろん、映像作品の作成、
理科の授業での電子顕微鏡との接続など、さまざまな教科やシーンで
iPadが活用されていることが確認できました。

　Ashmore State School（クイーンズランド州立の公立小学校）は、
約900名の生徒が在籍している州立小学校です。
インターナショナルスクールでもあり、日本や韓国などから留学生を
受け入れています。学校の方針として、規則で縛るのではなく
価値観を養う教育を重要視しています。全体の職員会議は、学期に2度しか
行わないといいます。学年教科ごとの小さな単位のミーティングを
多くすることで、効率化を図っています。また、教員同士のお互いの授業を
見学することで授業の質を高め合う校内研修を行っています。
Webサイト、e-mail、Facebookのほかに、See SawやQ-Schoolという
サービスを活用して、保護者との交流と情報公開を行っています。
校長のリーダーシップで、成績が上位ではなかった学校を、
トップクラスに引き上げました。オーストラリア共通のナショナル
カリキュラムで設定された学習目標以上のレベルの授業が行われており、
評価基準に関しても国が設定した内容を受け、学校独自に改編し運用しています。
Ashmore State Schoolの特色として、児童各自が学習目標を設定し
自己評価を行っており、これが児童の主体的に学ぶ力を養っています。
その一環として、前述のSee Sawというシステムに児童自身が作品や学習履歴を
アップロードすることにより、学習の過程が効果的に可視化され、
保護者も確認ができるようになっています。

　Ashmore State SchoolもHilliard同様、PrepからICT教育を実践しています。
例えば、合成映像を作成できるグリーンルームで、天気予報の発表をするなど
ICTを使って人前で話す練習をしています。また、データの概念を理解するため、
ExcelやWordを使用した授業も行っています。
初期段階は、PCやタブレット端末にログインすることが一つの課題となる
そうですが、毎週のように続けていくことで、次第に操作に慣れるといいます。
児童が先生となって使い方を教えている授業もありました。
ICTの活用に加えて、書く事にも力を入れており、タブレット端末の
活用だけではなく、児童はノートを綺麗にとっており、教室には目的別に
記述の注意事項が貼られていました。多くの授業で、タブレット端末と
ノートが机上にありました。

ISEN副委員長 井上

株式会社JMC
APPLIC（一般財団法人全国地域情報化推進協会） テクニカルアドバイザー。
校務情報化や情報モラルに精通し、文部科学省や総務省の委員会や委託事業にも参画している。