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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2018.09.14

大学生のコンピュータ操作スキルについて

 二つの大学に在籍する大学1年生に対して、それぞれ平成28年と平成30年に、
コンピュータと文書作成、表計算についてのスキル、それに関連して受けてきた
授業について、質問紙調査を行い、その実態を調べました。
その結果を見ると、コンピュータ操作スキルの基本であるキーボードについての
スキルは、「キーボード入力をスムーズに行うことに自信がある」(約28%と22%)、
「キーボードの Caps Lock の意味を知っている」(約3%と11%)と、
驚くほど低い数値でした。

 「文書作成ソフトで文章に図や写真を挿入することができる」は、
必ずできるようになっておいてほしい基本的な機能にもかかわらず
約49%と60%と低い数値でした。
また、「表計算ソフトで表を作成する自信がある」は、どちらも約27%、
「数式を入力して値(答え)を出す自信がある」は、約20%と約15%、
「グラフを作る自信がある」は約16%と約12%でした。
いずれも表計算ソフトの基本的機能であるのにもかかわらず、かなり低い数値で、
ほとんど技能が身に付いていないと言えます。文書作成ソフトに表計算ソフトで
作成した表やグラフを貼り付けてレポートを作成するとか、
文章に写真を貼り付ける操作は、小・中・高等学校の総合的な学習の時間で
調べたことをレポートとしてまとめる時にもよく使う操作だと思うのですが、
その低さに驚きました。

 また、コンピュータ室を利用した授業を受けた経験がある校種ついては、
小・中・高等学校すべてが最も多く(約60%と約63%)、
中学校と高等学校(約18%と約23%)、高等学校のみ(約9%と約7%)、
小学校と中学校(約6%)でした。これを見ると、授業時数はわかりませんが、
小・中・高等学校すべて及び中・高等学科を合わせても約80%にしかならない
ことに驚きました。
また、二つの大学に在籍する学生の出身高校が違うのにもかかわらず、数値が
あまり違わないことに驚きました。これが、学生の平均値なのかもしれません。
また、学習した内容として、キーボードタイピングは約5%しかありませんでした。
学習したことを忘れてしまっているのかもしれませんが、それを加味しても
驚くほど低い数値です。この数字を見ると「キーボード入力をスムーズに
行うことに自信がある」が低いことに納得しました。

 平成25年度に、全国の国公私立小学校5年生児童(116校3,343人)と
中学校第2学年生徒(104校3,338人)を対象に実施された情報活用能力調査
(文部科学省)によると、小学校では、1分間に入力できる字数の平均は5.9字、
中学校では、平均16.5文字でした。全国的に低いと言えそうです。

 もちろん学生全員のコンピュータ操作スキルが低いのではなく、
学生間で差が激しく、非常にスキルが高い学生もいる反面、
かなり低い学生もいます。スキルの高い学生に聞くと「高校でよく使っていた」
という回答が返ってきます。

 全国的にコンピュータ操作スキルを上げるには、
小・中・高等学校それぞれの卒業時点でのコンピュータ操作スキルの
達成目標を決めておく必要があるのではないかと思います。
目標値をどう決めるかについてはかなり異論が出るとは思いますが、
これを決めない限り前には進まないと感じています。

梶本先生

島根大学文理学部卒業。大阪教育大学大学院教育学研究科修了。
兵庫県公立小学校、中学校教諭を経て、三木市立教育センター所長兼指導主事、
IPU・環太平洋大学教授、現在、新見公立短期大学教授。
平成27年度よりICT活用教育アドバイザー(文部科学省)。

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