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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.02.22

マーフィーの法則(3)

マーフィーの法則の教訓は、失敗工学と呼ばれるような学問の領域にも発展した。
経営工学において、ミスやトラブルを想定して危機管理マニュアルを作成すること、
建築や土木において災害を想定して設計しておくことなど、うまくいかない状況を、
いかに事前に想定し、リスクを管理するかにつながっている。

教育の分野でも失敗から学ぶ場面は多いが、
取り返しのつかない大失敗は避けたいもの。
特に情報セキュリティの場面で、リスク管理は大切な視点であろう。

フールプルーフは、フール(馬鹿)が使っても事故が起きないように設計する
という手法で、使用者が誤った操作をしても危険が生じないように、
あるいはそもそも誤った操作や危険な使い方ができないようにと、
配慮して設計されていることである。

・オートマチック車ではブレーキペダルを踏まないと、ギアを
 パーキング(駐車)位置からドライブ(走行)位置に変えることができない。
・電子レンジのドアを開けたままでは加熱できない。

このような設計の例は、いくつか身近に発見できるだろう。

フェイルセーフは、なんらかの誤操作・誤動作による障害が発生した場合に、
常に安全側に制御する設計で、装置やシステムが必ずいつかは故障することを前提に、
失敗(フェイル)しても安全(セーフ)であるように考えられている。

・ドライヤーやこたつなどの電熱器具は、一定温度以上に達すると
 温度ヒューズが溶断して停止する。
・踏切の遮断機では、停電などで故障した場合に、
 重力により勝手に遮断棒が下りて、歩行者の安全を確保する。
・鉄道では、空気圧で動作するブレーキが故障した場合に非常ブレーキがかかる。

このような考え方で、地震の際に自動的にエレベーターを
最寄りの階に停止させて扉を開く「地震管制装置」なども設計されている。

バックアップは、事故や失敗が起きた場合に被害を最小限にするための予防策で、
故障の際に代用できる代替機を用意しておくことや、
コンピューターの故障や誤操作でデータが失われないように、
あらかじめ別の場所にコピーを保存しておくことなどである。

最近のコンピューターやスマートフォンには、
定期的なデータのバックアップを自動化するシステムも組み込まれている。

NASAのアポロ計画では、宇宙船のコンピューターが3系統3台用意され、
3台のデータが一致した場合だけ正しいデータとして扱うことで、
雑音などでデータが乱れた場合に備えていた。
3台をお互いのバックアップとして機能させていたのである。

マーフィーの法則は、ユーモアあふれる言葉遊びのような一面もあり、
その面白い類型を考えることも楽しいが、
実用上も役立つ生活の知恵を与えてくれるものでもある。

高橋先生

千葉学芸高等学校理事長・校長・理学博士。
日本教育工学協会評議員、全国高等学校長協会理事。
1995年100校プロジェクト参加を契機に、
ネチケットをはじめとする情報モラル教育の研究に取り組む。
日本教育情報化振興会「ネット社会の歩き方」検討委員、
文部科学省 情報モラル教育検討委員、文化庁 著作権教育検討委員、
総務省 情報リテラシー指標検討委員、JST社会技術研究開発センター
「犯罪からの子どもの安全」領域アドバイザーなどを歴任。

著書:教師と学校のインターネット(オデッセウス出版)、
   先生のための実践インターネット講座(NHK出版)他

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