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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.04.26

実は日本の教育情報化は世界の底辺レベル

国際大学GLOCOMで主幹研究員・准教授を勤めている豊福です。
これから数回にわたって教育の情報化に関する話題を提供したいと思います。

皆さんは、近未来の教育像を展望する
OECD(経済協力開発機構)Education 2030 プロジェクトをご存じですか?
Education 2030 は2015年に開始されましたが、各国の教育政策にも
大きな影響を与えており、日本の新学習指導要領も例外ではありません。
このプロジェクトの報告では、読解力や数学力などとともに、
「デジタル情報やデータを使いこなす力は不可欠」と位置付けられており(注1)
国際的にもその認識は共有されています。

多額の投資を伴う教育の情報化は、国際競争力の源となる人材育成に
直結するとはいえ、世界各国政府にとっては頭の痛い課題です。
1980年代のコンピュータの導入と情報教育の開始に始まり、
1990年代後半はインターネット接続、2000年代後半からは
1:1(1人1台)の学習者情報端末の整備に投資が行われるようになりました。

各国間の教育情報化整備水準を示す最も基本的な指標は、
「学校の教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数」です。
OECDのPISA2012のデータによると(注2)
調査対象15才生徒の数値は、1位がオーストラリアの1.0人、
2位がマカオの1.05人、日本は36位3.72人(OECD平均4.71人)でした。
ちなみに、文部科学省の平成29年度の調査結果によると平成30年3月現在の
数値は5.6人(小中高等含む)で、第3期教育振興基本計画(2018~2022)では
これを3.0人レベルにすることが目標とされています。

先のOECD PISA調査では、校内・校外のICTの学習活用頻度も質問しています。
質問項目(例えば、「校内のコンピュータで宿題をする」)について、
「毎日・ほぼ毎日」が占める割合を国別にまとめ、
2009年と2015年の結果を比較すると(注3)
他国はいずれもグラフの右上(割合が高い)へ移動しているのに対して、
日本だけはグラフの左下(割合が低い)最下位の位置にとどまっています。
つまり、6年間ずっと日本のICT学習活用頻度は低迷したままで、
他国からどんどん引き離されていることが分かります。

中学生以上になれば、生徒の8割以上は
スマートフォンを所有するのが当たり前の日本ですから、
校内はさておき校外の学習活用頻度が低迷したまま、
というのは疑問に思われる方も少なくないでしょう。
しかし、現実には若年層のスマートフォン普及は世界的なもので、
その傾向は先進国に限りません。
アジア圏の国々で比較すると、韓国・中国・台湾も
比較的低調なグループに入りますが、これらの結果から考えると、
児童生徒の情報機器普及度に加えて、学校での情報機器の扱い方や
生活面への指導が大きく影響していると考えられます。

1)OECD Education 2030 プロジェクトについて
http://www.oecd.org/education/2030/OECD-Education-2030-Position-Paper_Japanese.pdf

2)OECD (2015), "Graph 5.6 - Student-computer ratio at school, by socio-economic profile of the school", in Students, Computers and Learning: Making the Connection, PISA, OECD Publishing, Paris,
https://doi.org/10.1787/9789264239555-graph66-en

3)校内外でのICT学習活用度・各国比較(OECD/PISA調査による)
https://school-security.jp/ml/226/C3.pdf

豊福先生

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員・准教授。
公益財団法人 学習情報研究センター 研究員。
専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。
一貫して教育の情報化をテーマとして取り組み、
近年は、北欧諸国をモデルとした学習情報環境(1:1/BYOD)の構築に関わる。

主なプロジェクト
全日本小学校ホームページ大賞(J-KIDS大賞)企画運営(2003~2013)、
文部科学省・緊急スクールカウンセラー等派遣事業・東日本大震災被災地のための
学校広報支援(2011~)など。

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