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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.06.14

学びにデジタルシフトを起こす

ICTの効能をシンプルに表すと、
単位時間当たりの情報密度を数百倍にする「増幅器」と⾔えます。
直接効果は、情報量=情報密度✕利⽤時間で決まり、
利⽤時間に合わせて操作スキルも向上します。
ICTの活⽤効果を得るには、利⽤の頻度や時間を増やして
トータルの情報量を⾼め、⽬的に合わせた適切な⽅法で、
情報を⽣かせば良いわけです。

しかし、教育の情報化について⾔えば、これまでの学校は、
貧弱なネット環境や機材不⾜などインフラ⾯の課題が先にあるため、
そもそもICTの絶対的な利⽤時間を増やすことが困難でした。

例えば、毎年ICT利活⽤をテーマにした研究授業が各地で披露されますが、
その多くは授業準備に⼤変な時間がかかるのに対し、
実際に児童・⽣徒が活⽤する時間は限定的です。
操作習熟度には⼤きな個⼈差があるので、しばしば想定外のトラブルが起こり、
授業⾃体が滞りやすいという特徴があります。
このように、授業が中断するリスクが⾼く、
教員に過⼤な負担をかけるICT利活⽤は、いわば「魔法のつえ」のようなもので、
⻑らく豊富な経験と指導⼒を持つ教員にしか扱えないものでした。

さて、この15年ほど世界的なトレンドとなっている学習者⼀⼈1台情報端末整備は、
(1)廉価で壊れにくい筐体
(2)安定的なインターネット接続
(3)いつでもどこでも⾃分の情報環境が再現可能なクラウドサービス
(Office365やG Suiteなど)の三つが揃うことで、
インフラ⾯の課題が急速に解消されつつあります。

⼀⼈1台情報端末環境を駆使した活⽤が、
これまでと決定的に違うのは、教員の指導⼒に頼らなくても
「誰でも普通にICT利活⽤の学びが可能になる」ことですが、
これには⼆つの前提条件があります。

先に述べた通り、ICTは単なる増幅器なので、
仮に学習者側に端末を整備するならば、
学習者の利⽤頻度・時間を増やすほど、その効果も⼤きくなります。

そのためには、授業に限らず、
(1)学校に関わる情報のやりとり(通知・連絡・宿題の設定や回収など)を
ICT(メール・メッセンジャー・学校SNSなど)に置き換え
(これを「学びのデジタルシフト」と⾔います)、
(2)教員主導の教具的な活⽤から「学習者中⼼の⽂具的な活⽤」へと
移⾏することが必要です。

前提条件が達成できないと、教員間でもICTを使う⼈と使わない⼈の差は
著しいままですし、教員主導の「魔法のつえ」のような活⽤にこだわるほど、
実際の利⽤シーンは限られ、机の上で「⽂鎮化」することが多くなります。

前提条件が達成されると、学習者も教員も普段から端末操作に習熟するので、
初歩的な操作トラブルは確実に減ります。
授業中に指⽰しなくても、学習者は勝⼿に端末を使いますし、
指⽰が⼤雑把でも、適切に判断して作業するようになります。
これが「誰でも普通にICT利活⽤の学びが可能になる」の要です。
普段の使い⽅が洗練されれば、ICT利活⽤だからといって
⼤げさに構える必要はなく、⾼度な指導スキルも必要ないのです。

豊福先生

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員・准教授。
公益財団法人 学習情報研究センター 研究員。
専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。
一貫して教育の情報化をテーマとして取り組み、
近年は、北欧諸国をモデルとした学習情報環境(1:1/BYOD)の構築に関わる。

主なプロジェクト
全日本小学校ホームページ大賞(J-KIDS大賞)企画運営(2003~2013)、
文部科学省・緊急スクールカウンセラー等派遣事業・東日本大震災被災地のための
学校広報支援(2011~)など。

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