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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.06.28

Any Place, Any Device and One Cloud

G SuiteやOffice365のようなクラウドサービスの特徴には、
以下の5つが挙げられます。

(1)大半が(教育機関は)無償で利用できること。
(2)ChromeやFirefoxのような普通のウェブブラウザで稼働し、
   スマホ・タブレット用にもアプリが提供されていること。
(3)文書等のファイルを蓄積するストレージ
  (Google DriveやOneDrive)が付いていること。
(4)ファイル共有や同時協働編集が自由自在であること。
(5)クラウドサービスならではの優れた機能があること。

(2)と(3)は極めて強力です。例えば、ストレージを使えば、自宅のパソコンで
途中まで書き込んだ文書を保存しておいて、学校のノートパソコンで仕上げたり、
通学途中のバスの中で、スマートフォンの画面を見ながら
発表スライドのリハーサルをしたりといったことが自由自在です。
もうファイルを持ち歩くためのUSBメモリは必要ありません。

つまり、学習者の周囲にネット接続可能な環境があれば、
今回の表題の通り、クラウドサービスを使って、どこでも、どの端末でも、
自分の「知的生産」のための情報環境が即座に再現出来るということです。

ウェブブラウザ版はパソコンに直接インストールするソフトウェア版と比べると
若干機能が足りないとか、見た目が普通のオフィス・スイートゆえ、
学校・授業専用アプリでないことを不安視される方も少なくありません。
ただし、少々使い込んでみれば、足りない機能はそれほど本質的な課題ではなく、
実は(4)のファイル共有・同時協働編集こそ、学習の諸活動に必要な機能であると、
納得いただけるでしょう。

例えば、日本の学校では、学習者個別のタブレット端末に配布した質問に回答させ、
電子黒板に一斉集約するような授業支援システムが流行りですが、
クラウドサービスであれば、スプレッドシートをクラス全員に共有し、
各自指定枠に回答を書き込んでもらえば、全員分の回答をリアルタイムで
共有可能なので、特別な学校授業専用アプリは一切不要です。

クラウドサービスがすでに広く普及している欧米の学校では、
ペアワークやグループワークの課題として、協働でレポート(スライド)を
作成させるのが一般的になっています。

例えば、グループの構成メンバーには[編集権限]を、
先生には[コメント付与権限]を、クラス全員には[閲覧権限]を
それぞれ付与しておけば、授業外でもそれぞれ作業した内容は逐次反映されますし、
先生は進捗にあわせてアドバイスを加えることが出来ます。

一方、クラス全員は、それぞれの作業経過を相互に参照出来るので、
途中で得られたノウハウを自分たちの作業にも活かすことが出来ます。
さらに、推敲や発表を終えたレポートに公開用リンクを設定して、
学校公式ブログ等に掲載すれば、手間なくして保護者や関係者は
その成果を閲覧出来る訳です。

このような情報共有・公開を前提とした学びの進め方を
「学びの協働化・社会化」と言います。学びの協働化・社会化は今後、
特に思考力・判断力・表現力等の育成のための欠かせない方略となるでしょう。

豊福先生

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員・准教授。
公益財団法人 学習情報研究センター 研究員。
専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。
一貫して教育の情報化をテーマとして取り組み、
近年は、北欧諸国をモデルとした学習情報環境(1:1/BYOD)の構築に関わる。

主なプロジェクト
全日本小学校ホームページ大賞(J-KIDS大賞)企画運営(2003~2013)、
文部科学省・緊急スクールカウンセラー等派遣事業・東日本大震災被災地のための
学校広報支援(2011~)など。

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