2019.07.26
AI時代の教育を考える 第2回
前回は、内閣府が総合科学技術・イノベーション会議の
資料「AI戦略(人材育成関連)」をWebで公開したことをお伝えしました。
目を通していただけましたでしょうか。
今回は、その資料を共に読み解き、
AI時代に向けた教育について考えていきたいと思います。
このAI戦略の目的は、政府が掲げる
Society5.0の実現を通じて世界に貢献し、
日本独自の課題も解決していく国の基本方針に対して、
AIという観点で方策を策定することであるとしています。
この戦略はAIの社会応用の過程において、
日本の産業競争力の強化などに寄与する政策として
重要な戦略であると言われているものですが、
まだまだ教育界でも話題にする人は少ないようです。
この資料において内閣府は、100万人の児童・生徒が
AI教育を受けられる体制を2025年までに整えるとし、
「人工知能(AI)戦略」の人材育成面について示しています。
これまで、「読み・書き・そろばん」にあたるものを
リテラシー(Literacy)と呼んでいましたが、
デジタル社会の「読み・書き・そろばん」にあたるものが
「数理・データサイエンス・AI」と定義し、全ての国民がそれらの必要な力
「AIリテラシー」を育む教育改革を行う方針を打ち出しています。
(※図1参照 https://school-security.jp/ml/232/zu.pdf)
特に、高校において「情報Ⅰ」へのAI関連カリキュラムの導入や
入試科目として取り入れるなど、従来の科目に匹敵するほど
AIの知識が重視されているのが見えます。
そのために、小学校、中学校、高等学校には「AIリテラシー」を
身に付けられる環境を整備していくというようなことのようです。
高等学校は1校に一人以上、小・中学校は4校に一人以上のICT人材を積極的に
登用することや、 児童・生徒が一人1台の端末を持つICT環境を整備する中で、
これらの力の育成を目指すということです。
このように、政府は具体的な数字も打ち出しており、
教育分野においてAI人材の育成に臨んでいく重要性がうかがえます。
けれども、教育分野のICT利用もまだまだ進んでいない日本においては、
政府の提案通りに進むのか、教育界のみならず産業界・行政・学術界を巻き込み、
それぞれの密な連携と論議が不可欠であろうと考えます。
さて、第3回目はAI時代の教育を視野に入れて、今後、
教師はどのような授業観のもと、どのような授業づくりの工夫が
必要となるのか考えていきたいと思います。
佐藤先生
長年、横浜市公立小学校に在籍。
ますます教師力が問われてくる時代を担う後輩を育てたいという思いから、
2013年度金沢星稜大学人間科学部教授の職に就く。2019年度退官。
現在、金沢星稜大学、フェリス女子学院大学、城西大学非常勤講師。
研究分野は、教科教育や教師教育であるが、
最近はプログラミング教育推進事業に関わる。
「平成30年度文部科学省委託小学校プログラミング教育の
円滑な実施に向けた教育委員会・学校等における取組促進事業」委員、
最近の著書として鈴木将司編(2018)『小学校算数科教育法』(建帛社)第1章等。