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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2019.08.09

AI時代の教育を考える 第3回

最終回の今回は、AI時代の教育を視野に入れて、今後、
教師はどのような授業観のもと、どのような授業づくりの工夫が
必要となるのか、考えていきたいと思います。

これまでの日本型学校教育は、国際的にも
とても評価は高いのですが、一方では、今後の課題も抱えています。

例えば、ここで取り上げたように、AIの飛躍的な進歩によって
加速度的に変化する社会に応じた教育への転換が、
どこまでできるかという課題です。
これまでの日本型学校教育では、先生が答えを持っていて、
機転が利く子や頭の回転が速い子を中心に
授業が行われることが多く見られました。
じっくり型や視覚的理解が得意な子どもにとっては、
時間がなくて考えがまとまらない、自信がなくて答えられない
という状況にあったのではないでしょうか。

さらに、学ぶことに対して有用性を感じていない
子どもたちの増加には、危機感を感じます。
早く正解を導き出す「情報処理力」の高さが重要視されてきた授業から、
唯一の正解が存在しない中で、周りの人と議論して
考え方や見方を修正しながら、お互いに「納得解」を
探っていく力を育成する授業へと「観」の転換が迫られています。

そして、実際に授業づくりをする際には、これまで以上に、
次のポイントが重要になってくると考えます。

1)社会とつながる課題を
これまでは「大人になると必要だよ」と子どもたちに
言い聞かせながら、教科書にあるからやるという
授業をしてきていたのではないでしょうか。
それでは、学ぶ意欲も達成感も味わわせることはできないでしょう。
例えば、SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の
国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が
2016年〜2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。
日本では、認知度が極端に低いようです。
このような目標の中から、自分たちの力でできることを見つけ、
社会とのつながりを意識させる必要があると考えます。

2)ICTを味方に
自治体による差が気になるところですが、
学習者の学びのツールとしてタブレット端末が整備され、
授業で積極的に活用する姿が報告されています。
これまで学習者の学びのツールというと、鉛筆と消しゴムだけでした。
ここにタブレット端末が加わったことで、これまで見えなかった
「思考」を可視化する可能性が見えてきています。
このようなICTの活用は、授業を大きく変える
可能性があると期待しています。

※参考「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail
/__icsFiles/afieldfile/2018/04/12/1402839_1_1.pdf

3)協働的に学ぶ価値の共有を
「タブレット端末を活用して協働的に学ぶ」という名の下で
実際に行われている授業で、タブレット端末にある情報をペアで
見せ合って交流し、後は先生が上手にまとめてしまうという授業や、
画面を見せながら発表する際にどのように話すかという
話型指導が強化される授業に出会うことがあります。
結局、教師主導型の授業色を強めることになるという、
まったく逆向きに進んでいる状況が見えます。
タブレット端末を活用して協働的に学ぶことを通して、
より主体的になっていくという価値と、
協働的に学ぶそのものの価値を学習者と共有しておく必要があります。

これからやってくるであろうAI時代の教育に向けて、
未来の大人になる子どもたちにどのような力を身に付けさせるのか、
そのための「学校は?授業は?教師の役割は?学習環境は?」等々、
これからもさまざまな分野での論議を期待したいです。

佐藤先生

長年、横浜市公立小学校に在籍。
ますます教師力が問われてくる時代を担う後輩を育てたいという思いから、
2013年度金沢星稜大学人間科学部教授の職に就く。2019年度退官。
現在、金沢星稜大学、フェリス女子学院大学、城西大学非常勤講師。
研究分野は、教科教育や教師教育であるが、
最近はプログラミング教育推進事業に関わる。
「平成30年度文部科学省委託小学校プログラミング教育の
円滑な実施に向けた教育委員会・学校等における取組促進事業」委員、
最近の著書として鈴木将司編(2018)『小学校算数科教育法』(建帛社)第1章等。

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